パブリック - ジェフ・ジャービス

Publicness そう、お察しのとおり、「パブリックネス」を辞書で見つけようと思ってもたぶん無駄だろう。でもいいじゃないか。新語や造語、定義のリミックスなんて日常茶飯事なのだから。かつては同じような意味で使われていた「パブリシティ」はPRを意味す…

競争優位で勝つ統計学 - ジェフリー・マー

第1章 統計学という宗教――統計上の優位を信じ、偏差を恐れない 人生には必ず決定的瞬間というものがある。ためらいから行動へと踏み出だすとき。たった一つの決断でまったく新たな道が開けるとき。私にそんな瞬間が訪れたのは。ラスベガスのシーザーズ・パレ…

なぜシロクマは南極にいないのか - デニス・マッカーシー

序 あの偉大なる分野 科学的探究の源泉である生物地理学と、生命と地球の統一理論 『生物地理学の基礎(Foundation of Biogeography: Classic Papers with Commentaries)』という本に目を通していた私は、数分もしないうちに近代科学の発展の中で今まで出会…

スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 - ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ

不毛の地に希望を灯す「不屈の精神」 一二月初めの金曜日、デトロイトのホテル、イン・オン・フリートストリート。日の出とともに、ヨーロッパのテレビ局の取材班が、三脚、照明、マイクなどの入った黒いバッグをいくつも持って押し寄せ、オーク材を張りめぐ…

ヤバい統計学 - カイザー・ファング

はじめに 「世の中には3つの嘘がある。嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ」と言ったのは、ベンジャミン・ディズレーリ元英首相だ。この本はしかし、「真っ赤な嘘と統計」の本ではない。いつまでも色あせないこのテーマは多くの傑作を生み、ダレル・ハフ(『統計…

The Chronicles of Harris Burdick - Chris Van Allsburg, Lemony Snicket

今から25年以上昔の話だ。ボストンの出版社を、ハリス・バーディックと名告る謎めいた男が訪れた。男はキャプションの付いた魅力的な14枚の絵画を持ち込んだ。そして、まだ持ってくるからと言い残しその場を立ち去った。その後、男の消息は知れずじまいと…

スティーブ・ジョブズI - ウォルター・アイザックソン

はじめに 本書が生まれた経緯 2004年の初夏、私のところにスティーブ・ジョブズから電話があった。ジョブズは、折々、友だちのような感じで連絡をしてくるのだ――私が働いていたタイム誌やCNNに、新しく発表する製品を取り上げてほしい場合などは熱心に。…

日本の農業が必ず復活する45の理由 - 浅川芳裕

38 なぜオランダは 世界最強の農業国と呼ばれるのか 世界の農業界で、オランダ農業の競争力の高さを知らない人はいません。 オランダは米国に次ぐ世界2位の農産物輸出国です。その輸出額は790億ドルにも及び、日本の農産物輸出額の30倍も稼ぎ出していま…

聖書男(バイブルマン) - A.J.ジェイコブズ

はじめに これを書いているいま、ぼくはひげを生やし、モーセにそっくりだ。それかエイブラハム・リンカーン、もしくはテッド・カジンスキー[001]に。この三人とも名前を呼ばれたことがある。 手入れの行き届いた、社会的に受け入れられるような代物じゃない…

フィリピン「超」格安英語留学 - 太田英基

フィリピン留学、それは英語留学業界の革命児です。 質の高い英語を格安マンツーマンで学ぶことができる環境は世界に多くはありません。 既に韓国人には一般的な留学となっているフィリピン留学。 欧米への語学留学しか考えていなかった人には、目からウロコ…

悪人 - 吉田修一

多視点で書かれた犯罪小説。2006-2007年新聞連載。2007年単行本刊。2009年文庫本刊。2010年映画公開。「◇」のマークが出てくる度に語りの視点が切り替わる。全章を通じて合計72回。ただし、途中でナレーター的な視点が挿入される箇所もある。この小説を一言…

アメリカ音楽史 - 大和田俊之

〈国民文化〉の成立 一八四二年一月、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズはアメリカに向けて旅立った。『ボズのスケッチ集』や『オリバー・ツイスト』などの作品は大西洋を隔てた新大陸でも話題になり、多くのアメリカ人読者が彼を心待ちにしていた。もと…

ハンガー・ゲーム - スーザン・コリンズ

ヤングアダルト向けのディストピア小説。三部作で、邦訳されているのは、第一作の『ハンガー・ゲーム』のみ。映画化が決まっており、来年の3月には公開される予定だ。『文藝 2011年 05月号 [雑誌]』の「国境なき文学団」でも取り上げられていた。詳しいスト…

改訂合本 ネイティブの感覚で前置詞が使える - ロス典子

それではもう一度、上の絵を見てon, in, atのいずれかを選び、各絵を表わす文章を作ってみてください。 ① There is a cat ( ) the corner. ② There is a cat ( ) the corner. ③ There is a dog ( ) the corner.改訂合本 ネイティブの感覚で前置詞が使える…

Deux petits pas sur le sable mouille - Anne-Dauphine Julliand

フランスで売れている本 Deux petits pas sur le sable mouillé。著者は女性作家の、Anne-Dauphine Julliand。フランスのベストセラー作家というと、Marc Levi や Guillaume Musso なんかが思い浮かぶけど、こういう作家も読まれるんだな、と思った。本書は…

カエサル『ガリア戦記』第1巻 - 遠山一郎

はしがき 本書は,カエサル『ガリア戦記』第1巻の原文に訳と注をほどこしたものである。 この方式を思い立ったのは,筆者が早稲田大学文学部で授業「中級ラテン語」を20年あまり担当した経験からである。その授業の冒頭部分で,毎年必ず“比較的やさしい”原…

変見自在 サダム・フセインは偉かった - 高山正之

朝日新聞の「朝日歌壇」に「米軍が地雷を敷設して誰もいないアフガンの村には砂舞うばかり」という歌が入選したと「正論」がびっくりして書いていた。 アフガンに地雷を撒いたのはソ連だろうが。それも敷設ではない。あの攻撃ヘリMi24ハインドが空から撒い…

日本は世界4位の海洋大国 - 山田吉彦

漁業従事者の減少の理由は、沿岸漁業従事者の一世帯あたりの平均年収が二七四・二万円(二〇〇七年)と低いことにある。また、労働環境も厳しく、若年層が敬遠していることも理由だ。 ただし、「海面養殖漁業」を行っている漁家では、平均年収が五三八・四万…

体が若くなる技術 - 太田成男

プロローグ 誕生日を重ねるごとに、またひとつ年をとったのかと、ため息をつく人がいます。誕生日を通して、自分の「老い」を認識してしまい、だんだん体が若さから遠ざかっていくことを感じてしまうのでしょう。 私たちはいつか老いと闘わなければいけない…

破壊する創造者 - フランク・ライアン

ジェイコブ・ブロノフスキーは名著『人間の進歩』の冒頭で、「人間は非常に特異な生物である。人間には、生来、他の生物とは決定的に違った特徴がいくつもある」と書いている。性に関する言及など、この本には今から見れば時代遅れと思われるところもあるが…

シェア からビジネスを生みだす新戦略 - レイチェル・ボッツマン, ルー・ロジャース

翻訳者によって改悪された文を見つけた。過去の記事で指摘したものと同様の例だ。 二〇一〇年四月現在、エアビーアンドビーには八万五〇〇〇名近いユーザーが登録し、一二六か国の三二三四都市で一万二〇〇〇余りの物件がアップされている。イーベイがさまざ…

倫敦塔 - 夏目漱石

作中に登場するダンテ『神曲』地獄篇第3歌冒頭。まず、原文。 Per me si va ne la città dolente, per me si va nell' eterno dolore, per me si va tra la perduta gente. Giustizia mosse il mio alto Fattore; fecemi la divina Podestate, la somma Sap…

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 - ジョー・ナヴァロ、トニ・シアラ・ポインター

<郷に入れば(フランスでは)……> 模倣と同調が世界を変えることもあると、歴史が教えてくれる。一七七八年から一七八五年までアメリカ初のフランス大使を務めたベンジャミン・フランクリンは、アメリカ独立戦争にあたってフランスから同盟の約束を取り付け…

午前零時のフーガ - レジナルド・ヒル

レジナルド・ヒルを読んでいたら、Edwin Muir の詩 The Child Dying が引用されていた。原文と松下祥子氏の訳を並べてみる。 Unfriendly friendly universe,I pack your stars into my purse,And bid you so farewell.不親切で親切な宇宙よ、ぼくはおまえの…

リフレーミング:その理論と実際(現代のエスプリ no.523)

今号の『現代のエスプリ』を読んでたら気になる箇所に遭遇したので、メモ。 表2 体系的な推論の誤り(Beck, 1976;Beck et al., 1979 文献(3)と(10)を参考に作成) ものごとを白か黒かのどちらかで考える全か無か思考。 たった1つ良くないことがあると世の…

バウドリーノ - ウンベルト・エーコ

「足の置き場を知っているので私が先に行きましょう。あなたは頭上の石をもとに戻してふたをしてください」 「どうするおつもりですか?」とバウドリーノは尋ねた。 「降りるのです」とニケタスは言った。「それから、手さぐりで壁龕を探しましょう。そのな…

サンデルの政治哲学 - 小林正弥

今年の4月〜6月にNHKで放送された『ハーバード白熱教室』で有名になったサンデル教授の政治哲学について、千葉大学の小林教授が解説したもの。 本書は6講構成をとっている。第一講はハーバード講義の解説、第二講〜第五講までは、サンデルの著作の解説であ…

誰も語らなかった防衛産業 - 桜林美佐

『WiLL (ウィル) 2011年 02月号 [雑誌]』で渡部昇一氏と対談していた桜林美佐氏の著書。対談の冒頭で、刊行のタイミングが良かった、と渡部氏が述べていた。 <<はじめに>> テレビで誰かが言っていた。 「町工場は日本の宝です! 守らなくてはいけません」 し…

告発・現代の人身売買 - デイヴィッド・バットストーン

人身売買は暗がりにはびこるものです。しかも、自分とは無関係の場所で、無関係の他人に起きることだと考えがちです。けれども実はそうではない。人身売買という犯罪には地球上すべての国がかかわっており、わが国も例外ではありません。―― ヒラリー・ローダ…

墓標なき草原 - 楊海英

第14回司馬遼太郎賞受賞作。著者は静岡大学教授の楊海英氏(内モンゴル出身)。本書は文化大革命時に内モンゴルであった迫害の実態をあぶり出す民族誌。 何故、中国にもモンゴル人がいるのだろうか。今、モンゴルといえば、朝青龍と白鵬という二人の横綱の…