『東大駒場連続講義 知の遠近法』

東大駒場連続講義 知の遠近法 (講談社選書メチエ)

東大駒場連続講義 知の遠近法 (講談社選書メチエ)

本書は大学での講義をまとめたもの。
中でも「小説のパースペクティヴ」(菅原克也)が面白い。
夏目漱石の小説『門』『三四郎』『吾輩は猫である』などを例にとり、小説におけるパースペクティヴについて分析していくのだが、「視点」と訳されがちなパースペクティヴとは「視」点だけに限定される概念ではないと述べる。なぜなら文中の描写が、耳から聞き取った音についてのものであれば「聴」点だし、舌で感じた味についてのものであれば「味」点だし、触覚で感じた感覚についてのものであれば「触」点だから、という指摘には頷くしかない。