日本語が亡びるとき
本書「日本語が亡びるとき」は、今世紀においてこれまで書かれた中で、最重要の一冊(以下略)。
ノンフィクションの本を紹介する際、ふだん私はここに目次を入れているのは本blogの読者であればご存知かと思う。しかしこと本書に限っては、それは、入れない。隅から隅まで、頭から順番に最後まで読まれなければならないのが本書である。一本道に道案内はいらない。
小飼氏がこれほどまでに激賞していたので読んでみたが、どのページを読んでも評価すべき箇所が見つからない。なので、どうでもいい部分をメモしておく。
アガサ・クリスティに出てくる名探偵ポワロはベルギー人だという設定で(つまり、本物のフランス人のようには格好よくないという設定で)、フランス語を直訳したまことに妙な英語を話す。「おわかりですか?」という質問は、「Do you understand?」の代わりに、「You comprehend?」という、「Vous comprenez?」というフランス語の直訳になる。「何々をさせて下さい」という構文は、「Allow me to...」の代わりに、「Permit me to...」という、「Permettez-moi de...」というフランス語の直訳になる。そのように随所にはめこまれているポワロの妙な英語が、なんともおかしく、そのおかしさがポワロを「外部の人」として際だたせるのだが、アガサ・クリスティは、自分の読者---必ずしも知識人ではない、自分の読者がそのおかしさがわかるのを前提としているのである。
アガサ・クリスティは一冊も読んだことがないので、この点が日本語訳ではどうなっているのか、今度確かめる予定。
あと、この本で引用されていた本についてメモしておく。
それでは、まず、<普遍語> とは何か?<普遍語> とは何かを考えるのに、ちょうどよいきっかけを与えてくれる、一冊の本----しかも、過去四半世紀にわたって世界中で大きな影響をもった一冊の本がある。
(中略)
その本とは、ほかでもない、すでに古典となった、ベネディクト・アンダーソン著の『想像の共同体』である。(中略)日本でも大きな反響を呼び、ことに文学研究者あいだで、<国民国家> と <国民文学> について考える際の必読書になった。
『想像の共同体』の核心を一言で要約すれば、次のようになる。
国家は自然なものではない。
定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険2期4)
- 作者: ベネディクト・アンダーソン,Benedict Anderson,白石隆,白石さや
- 出版社/メーカー: 書籍工房早山
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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この本(日本語が亡びるとき)を賞賛するブログ書評が多い中、やっと、これに異を唱えるまともな書評が出てきてホッとした。
⇒日本語はすでに亡びている
- 作者: 水村美苗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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