反哲学入門 - 木田元

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f9e7990259ea19a62c85c3b43e4be877
池田氏のブログに感化されて読んでみた。

philosphy

"philosofy"がギリシア語で「愛知」の意味だというのは有名な話だ。そもそも何故この語が生まれたのか。紀元前六世紀頃、ピュタゴラス教団の創始者が、世界には三種類の人がいると言った。

  1. ho philarguros「商人のように金銭を愛する人
  2. ho philotimos「軍人やスポーツ選手のように名誉を愛する人
  3. ho philosophos「知識を愛する人


このとき、"philosophos"(形容詞)はまだ「知識欲が旺盛な」ぐらいの意味だったらしい。その後、ソークラテースがソフィストを攻撃するために皮肉の意味を込めて"philosophia"なる抽象名詞を使ったのが、"philosophy"の語源とされる。

日本語の訳語は最初、西周が「希哲学」としていた。ところが「希(ねがうの意)」が何故か消えて「哲学」に変化した。「希哲」は周敦頤の『通書』にある「士希賢」からヒントを得たらしい。

realitas obiectiva

デカルトの『省察』に出てくる"realitas obiectiva"という言葉は、邦訳で「客観的実在性」とされる場合が多いが、この時代、"realitas"に「実在性」の意味はなく、また"obiectiva"にも「客観的」の意味はない。"realitas obiectiva"とは、「心に投射され、いわば思い描かれたある事物の事象内容(大きいとか重いとか黒いとかいった内容)、つまり事物の諸性質の観念とか表象とか」を意味しているとのこと。
そもそも"obiectum"(obiectivaの名詞形)はアリストテレースの用語"antikeimenon"の逐語訳であり、そのギリシア語の意味の一つに「感覚の働きに向かい合うもの」すなわち「感じとられ表象されたもの」という意味があり、ラテン語の"obiectum"も専らその意味で使われた。

ニーチェ

ニーチェは、プラトーン以来の西洋哲学を継承するのではなくこれを相対化しようという壮大な試みを実践した人物であり、西洋哲学の目指すところはニーチェを境に180度異なってしまったという事実を本書を読むまで小生は知らなかった。
バーゼル大学助教授時代に公刊した『悲劇の誕生』が原因でニーチェは退職に追い込まれ、以後在野の哲学者として全ての著書を自費出版しなければならなかった。
                   

ハイデガー

ハイデガーニーチェの行おうとしたことをより精緻化した。『存在と時間』の後編を書かずにハイデガーは生涯を閉じた。木田の主張に拠れば、現存する『存在と時間』だけを以ってハイデガー実存主義の哲学者と断定するのは誤りとのこと。

反哲学入門

反哲学入門