ジェイムズ・ジョイス・エステート

Stanford scholar gets six-figure settlement from James Joyce Estate

『ダブリンの市民』や『フィネガンズ・ウェイク』や『ユリシーズ』で有名なジェイムズ・ジョイスにはルシア(ルチア)という名の娘がいた。スタンフォード大学のキャロル・ロエブ・シュロス(Carol Loeb Shloss)教授は、2003年、この娘の伝記 "Lucia Joyce: To Dance in the Wake" を出版した。ところが、ジェイムス・ジョイスエステートから著作権を侵害しているとして訴えられてしまった。その裁判で、逆に、女史はエステートに対して損害賠償(24万ドル=弁護士費用及び訴訟費用)を請求し、これが認められたとの記事をスタンフォード大学のHPで読んだ。
なにしろ、ジェイムズ・ジョイスの孫のスティーブンは祖父の作品の著作権についてとにかくうるさく、研究者はほとほと困っていたらしい。これで溜飲を下げた者もさぞ多かったろう。


この記事を読んでくだんの伝記に興味を持ち、邦訳書を探してみたところ、残念ながら未訳らしいので、原文を読んだ。それによると、「ルチア」は、ダンテの『神曲:地獄編』に登場する案内役の名前である。ただ、同時に「ルチア」はドニゼッティの『ランメルモールのルチア』の「ルチア」でもある、と書かれている。教養豊かな西洋人であれば、この作品を知っているかも知れないが、小生は寡聞にして知らない。調べてみるとこのイタリア語オペラは、スコットランドの作家ウォルター・スコットの小説『ラマムアの花嫁』を原作としているとのこと。さて、ここでウォルター・スコットが出てきた。スコットの有名な作品としてすぐ思い浮かぶのは、『アイヴァンホー』と『湖の麗人』くらい。『ラマムアの花嫁』の日本語訳を探したが存在しない。読もうと思い立ったならば、原書で読むしかない。こうして、日本人が英文学に興味を持つと、英語の世界に入って行かざるを得ないことを思い知らされるのである。


伝記の内容についてはこちらのHPが詳しい。

Lucia Joyce: To Dance in the Wake

Lucia Joyce: To Dance in the Wake