100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図 - ジョージ・フリードマン

訳者あとがきによれば、著者は一九四九年ホロコーストを生き延びた両親のもとにハンガリーに生まれ、幼くしてアメリカに渡った。コーネル大学政治学博士号を取得した後、大学で政治学の教鞭を執りながら、アメリカ軍や関係機関向けに安全保障や国防問題に関する講義や情報分析を行い、一九九六年に情報機関「ストラトフォー」を立ち上げる。
ストラトフォーは特に一九九九年のコソボ空爆、二〇〇一年の同時多発テロ事件とそれに続くアフガニスタン侵攻など、アメリカ外交の転機に的確な分析や予測、提言を通して指導力を発揮したことから、「影のCIA」の異名を取り、多国籍企業ヘッジファンド、各国政府、軍機関などを顧客に抱え、各界に絶大な影響力を誇っている。

  • 第1章の概要
    • アメリカの支配はまだ始まったばかりであり、二一世紀はアメリカの時代になる。
    • 最も重要な点は、アメリカが世界の海洋を支配しているということ。
    • アメリカはまだ若い国家であり、そのため本当の姿を知るのは難しいが、実は驚くほど強力だ。
  • 第2章の概要
    • 二〇年前のソ連崩壊により、冷戦時代は動きを抑えられていたイスラム地域が急激に不安定になった。
    • アメリカの基本戦略を知れば、対テロ戦争がどのような結果に終わろうと、イスラム世界が混迷さえしていれば、アメリカは勝ったといえる。
  • 第3章の概要
    • 人口爆発は終焉し、世界の人口構造は大きく変化する。
    • 人口の減少は、人々の生き方や国家の行動にも影響を及ぼす。
    • アメリカでは人口減少やコンピュータなどが新しい社会を形作り、それは今後世界中に否応なしに広まるだろう。
  • 第4章の概要
    • 次の紛争の火種になりそうな場所は、東アジア(中国、日本)、旧ソ連圏、ヨーロッパ、イスラム世界(特にトルコ)、メキシコである。
    • 二〇二〇年という文脈では、中国とロシアが最重要となる。
  • 第5章の概要
    • 大方の予想に反して、中国が世界的国家となることはない。
    • 中国のもっともありそうなシナリオは、日本をはじめとする強国が中国に経済進出を活発化させるうちに、中央政府が力を失い、分裂するというもの。
  • 第6章の概要
    • 資源輸出国として生まれ変わったロシアは、コーカサス中央アジア、ヨーロッパ方面に勢力を強める。
    • ロシアの動きにアメリカが対応し、ふたたび冷戦が起こる。今回の冷戦は前回と比べれば小規模だが、前回と同様、ロシアの自壊で幕を閉じるだろう。
  • 第7章の概要
    • アメリカは五〇年周期で経済的・社会的危機に見舞われている。
    • 次の危機は労働力不足で、二〇二八年、または二〇三二年の大統領選挙で頂点に達する。アメリカは移民の受け入れ拡大政策で問題の解決にあたるだろう。
  • 第8章の概要
    • 二〇二〇年代のロシアの崩壊と中国の分裂が、ユーラシア大陸に真空地帯を生み出す。
    • その機会を利用して、勢力を伸ばしていくのが、アメリカと同盟を組んだ、日本、トルコ、ポーランドである。
    • しかし、三カ国が勢力を伸ばすにつれ、アメリカは不安を感じるようになる。
  • 第9章の概要
    • 二〇四〇年代、アメリカは日本やトルコへの締め付けを厳しくする。
    • これに対抗するために日本とトルコは同盟を組む。一方、アメリカはポーランドを支援する。
    • また、アメリカは宇宙での軍事活動を本格化し、宇宙から制御する新世代兵器を導入する。
  • 第10章の概要
    • 日本とトルコ、アメリカは、望むと望まざるとにかかわらず、やむなく戦争へ向かうことになる。
    • 二一世紀半ばの戦争は、技術革命によって新しい形のものとなる。宇宙が戦場となるのだ。
  • 第11章の概要
    • 二〇五〇年代の戦争では、宇宙を制するものが地上も制する。宇宙偵察システムによる情報収集と宇宙発電システムがそのカギである。
  • 第12章の概要
    • 戦争被害の最も小さかったアメリカが、またしても戦争の恩恵を最も大きく受けるだろう。
    • 二〇六〇年代、宇宙の商業利用を進めるアメリカは、黄金時代を迎える。
  • 第13章の概要
    • 二〇八〇年代のアメリカは、過剰な移民という新たな問題を抱え込む。とくにメキシコ系住民の問題がクローズアップされる。
    • 経済大国の一つに浮上しているメキシコは、アメリカの覇権に挑戦することになるだろう。


100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

目次


著者まえがき
序 章 アメリカの時代とは何か

二一世紀/一〇〇年先を予測する

第1章 アメリカの時代の幕開け

ヨーロッパ/旧時代最後の戦い

第2章 地震アメリカの対テロ戦争

イスラム地震アメリカの基本戦略とイスラム戦争/余震の後/まとめ

第3章 人口、コンピュータ、そして文化戦争

人口爆発/人口破綻はわれわれの生き方をどう変えるか/政治的影響/コンピュータとアメリカ文化/まとめ

第4章 新しい断層線

環太平洋地域/ユーラシア地域/ヨーロッパ/イスラム世界/メキシコ/まとめ

第5章 二〇二〇年の中国―張り子の虎

中国の賭け/中国の政治危機/日本の場合

第6章 二〇二〇年のロシア―再戦

ロシアの力学/コーカサス中央アジア/ヨーロッパ区域

第7章 アメリカの力と二〇三〇年の危機

第一期---建国者から開拓者まで/第二期---開拓者から田舎町まで/第三期---田舎町から工業都市へ/第四期---工業都市から郊外中産階級へ/第五期---郊外中産階級から恒久的移民階級へ

第8章 新世界の勃興

アジア/トルコ/ポーランド/まとめ

第9章 二〇四〇年代―戦争への序曲

トルコ/ポーランド/圧力と同盟/宇宙とバトルスター/高まる緊張

第10章 戦争準備

新しい形の戦争/アメリカの時代---精度の向上がもたらした総力戦の終焉/宇宙戦/戦争計画

第11章 世界戦争―あるシナリオ

オープニングショット/反撃/新しい技術、古い戦争/終局

第12章 二〇六〇年代―黄金の一〇年間

エネルギー革命

第13章 二〇八〇年―アメリカ、メキシコ、そして世界の中心を目指す闘い

人口、科学技術、そして二〇八〇年の危機/メキシコの経済発展/メキシコの地政学

エピローグ
謝辞
訳者あとがき


小飼氏の書評