グラーツ

NHK世界遺産への招待状」の第42回(2010.6.5放送)は、オーストリアグラーツ(Graz)歴史地区(シュタイアーマルク州)だった。案内役は現代建築家のミヒャエル・シスコヴィッツ(Michael Szyszkowitz)氏。歴史地区保存委員会(Grazer-Altstadtsachverständigenkommission)の副委員長(Vorsitzende-Stellvertreter)をつとめているだけあって、かなりの辛口だ。素人目からは立派に見える市庁舎の建物を評して、異なる建築様式の寄せ集めに過ぎないからダメだ(100点満点で言えば50点)、と一蹴する。

グラーツは、過去、神聖ローマ帝国に属していた。そして国境に近かかったため、隣国オスマン帝国からたびたび攻め込まれた。これに対処すべく、イタリアから建築家を呼び寄せ、砦を星形の要塞に造り替えた、という経緯がある。そのときの建築様式がルネサンス様式だったため、街にはルネサンス様式の建物がたくさん存在する(州政府議事堂ラントハウス等)。寒い気候に合わないと言われるルネサンス様式がグラーツに多く存在する理由はここにある。

街の景観を守るための委員会が存在する点は、芸術的センスを持つ欧州ならではの特徴だと思う。日本は街の景観を気にするひとが少ないから是非とも見習って欲しい(自分も含めて)。