中国古典からの発想 - 加藤徹

ぱらぱらとめくるといろいろと自分の知らないことにでくわす本。それはたとえば、以下のようなこと。

  • ローマの休日(Roman holiday)」は英語で「残酷な見せ物」の意
  • 「灌腸」とは便秘のときにやるあの浣腸でもあるが、料理の名前(ブタの腸の中にに物を注ぎ込み、油で揚げ、ニンニクの汁で食べる北京の庶民的な料理)でもある
  • 「冷凍麻雀」とはスズメの冷凍したものであり、日本語の「麻雀」は、中国語では「麻将」と表記する
  • 幸若舞「敦盛」の「人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり」の意味は「人の世の五十年の歳月は、(仏教の四天王が住む)下天の一日にしかあたらない」である
  • 中華人民共和国」のうち、「人民」も「共和国」も近代の日本漢語からの借用語である
  • 京劇では戦闘ヒロインの生理描写に抑制がない 例)『背子破奇陣』の穆桂英、『南界関』の徐金花、『白蛇伝』の白素貞
  • コウモリは中国で縁起がよい----「蝙蝠」の発音は「変福」や「遍福」と同じ(ビエンフー)
  • 中国でカメ(「烏亀 ウーグイ」)は、バカの意味になる

中国古典からの発想―漢文・京劇・中国人

中国古典からの発想―漢文・京劇・中国人

序に代えて----学問とは何か
第一章 今こそ漢文力を
二千数百年読み継がれる漢文古典

中国民衆の知恵----兵法三十六計

漢文をヒントに考える

漢文と手話の類似性
第二章 漢字文化と日本
社会階層から見た日中文化交流----漢文脈と唐話派

明治維新を可能にした漢文訓読文化

未曾有の漢字ブームの不気味さ
第三章 北京三千年史を彩る八人
はじめに 1荊軻----始皇帝を暗殺せよ 2劉備----英雄の原点 3マルコ・ポーロ----謎の大旅行家 4永楽帝----紫禁城を造る 5西太后----悪女か女傑か 6梅蘭芳----したたかな名優 7老舎----文人の悲劇 8毛沢東----眠り続けるカリスマ おわりに
第四章 おかめはちもく京劇論集
京劇の赤い顔

京劇コードの特異性

時代の波にゆれる京劇----その歌詞と音楽、そして舞台

京劇から見た北京と上海

京劇茶話
第一話 異説だらけの京劇と政治の挿話 第二話 鑼鼓経の妙味 第三話 京劇界のことわざ 第四話 票房とホームページ
芸人から芸術家ヘ----中国における芸術の誕生

梅蘭芳の芸のおおらかさ
第五章 中国キャラクター列伝
孫悟空----本音キャラから建前キャラへ 2白素貞----悪女からの華麗なる転身 3関羽----神さまからロボットまで 4紅娘----主役を食った中国版キューピッド 5包公----五百年かけて眉毛が曲がった正義漢 6穆桂英----史上最強の戦闘主婦キャラ 7武松----性格が分裂した英雄 8西施----可憐さと妖艶さをあわせもつ美女の代名詞 9杜子春----原作は薬物の人体実験の話 10陳世美----糟糠の妻を捨てる薄情男の代名詞 11虞美人----史上屈指のワンヒット・ワンダー 12孔子----「聖人」から化石まで
第六章 日中交流秘話
第一話 「度尽劫波兄弟在」----魯迅西村真琴 第二話 今と昔の都市伝説 第三話 ラーメンと石鹸とキョンシー 第四話 一休さんの「中国語」 第五話 江戸時代の中国語ブーム(一) 第六話 江戸時代の中国語ブーム(二) 第七話 江戸時代の中国語ブーム(三) 第八話 ピジン中国語 第九話 「初恋の味」と居庸関 第十話 遠州漂着唐船「万勝号」のこと(一) 第十一話 遠州漂着唐船「万勝号」のこと(二) 第十二話 遠州漂着唐船「万勝号」のこと(三)
第七章 中国語探検隊
第一話 姓の話 第二話 北京の町の怪しい看板 第三話 中国語五万年 第四話 自動翻訳の難しさ 第五話 呼称の変化にご用心 第六話 性質と形態 第七話 縁起をかつぐ 第八話 「食べる」の使いかた 第九話 例外的な単語 第十話 副詞の訳しにくさ 第十一話 円と元 第十二話 自由とセクハラ
あとがきに代えて----古典とは何か
初出一覧
索引