古式然?

ブラジル文学序説』を読んでいたら、妙ちくりんな表現に出くわした。「古式然とした」がそれだ。著者の頭の中で起きたことを推測してみる。そこにはまず「古色蒼然(こしょくそうぜん)とした」がもやもやっと存在した。すると「古式ゆかしい」がこれを邪魔して「古色」を「古式」にすり替えた。しまいには何者かによって「蒼」が盗まれた。あるいは「旧態依然」から「依」の抜けた「旧態然」が出生の秘密に絡んでいる可能性も考えられる。とはいえ表面的には、うろ覚えの「古色蒼然」をひっぱり出そうとしたらなぜか「古式然」が飛び出してきただけかも知れないが。ただ、この表現、ネットで検索してみるとけっこうヒットするから、要注意だ。

 全てのドイツに関する問題に対して、ブラジル政府はどのような対応をしていたのか? 当初、立法府の議員らはそれらを“問題”とすら考えてはいなかった。というのも、彼らドイツ人は工業分野において秀でた能力を有しており、さらに友好的であるのだから、そうした移民たちがやるに任せていたのである。しかしドイツ人移民らが意図していた本当のところは、ブラジルの地に移民しようとも自らがドイツ人であり続け、ブラジルで生まれた彼らの子弟らに対しても自分たちの本当の祖国はドイツであると教え込むことにあったのである。一方、ブラジル政府が企図していたことは、国民の福利更正を促進するものではなく、政治家一人一人が権力の座に留まり続けることであったのである。つまり選挙において、彼らが自分に一票を投じさせるために、有権者であるドイツ移民らとの関係を平和裏に済ませるのが得策であると考えたわけである。そうした古式然とした政治家の無知により、ドイツ人らはブラジル国内で次第に力をつけるようになり、いずれ脅威となる民族小国家を着々と建設して行ったのである。


この本の校正は信頼性に欠ける。先の表現を引用していたら別の欠陥が見つかった。「福利厚生」が「福利更正」になっているのだ。校正者はなにをやっているのだろうか。

引用箇所以外の文章も含めて読んだ上で思うのは、そもそも著者はポルトガル語よりももっと日本語の勉強をした方がいい、ということだ。もしくはポルトガル語で出版して翻訳者に訳してもらったらいかがだろうか。