[翻訳]ビル・ゲイツが選ぶ2013年に読んだ本ベスト7

  • The Box, by Marc Levinson
    The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and The World Economy Bigger1冊丸ごとシッピング・コンテナについて書かれた本など人は読む気にならないかもしれない。おまけにレビンソンは自分の選んだえらく突飛な話題に対して自意識をあらわにしている。けれども、レビンソンは充分に納得のいくような論拠を挙げて、シッピングのコンテナ化への動きが世界経済に計り知れない衝撃を与えた事実、その動きが世界のビジネスのやり方を一変させた事実を解き明かす。そして、それを非常に読みやすい物語に仕立て上げた。もはや僕は貨物船を以前見たのと全く同じ見方で再び見ることはないと思う。
  • The Most Powerful Idea in the World, by William Rosen
    The Most Powerful Idea in the World: A Story of Steam, Industry, and Invention蒸気機関についての本である所以外は、少しばかり『コンテナ物語』に似ている。ローゼンは聡明な人物たちや徐々に進むイノベーションやこのイノベーションの背景にある歴史的文脈を互いに縒り合わせている。僕としては、2009年夏以後の蒸気機関についてもっと知りたかった。というのも、息子と僕はその夏、ロンドン科学博物館で長いこと遊んでいたからね。
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  • Harvesting the Biosphere, by Vaclav Smil
    Harvesting the Biosphere: What We Have Taken from Nature (The MIT Press) (English Edition)バーツラフ・シュミル以上に僕がその著書を待ち望んでいる作家は他にいない。本作でシュミルは可能な限り明快かつ膨大な写真を載せて人間がいかに生物圏に変化をもたらしてきたかを訴えている。本書は少しばかりドライで、僕は見慣れない数多くの用語を調べなければならなかったが、それでも、この惑星に僕たちがもたらしている衝撃に関心を寄せる者にとって、本書は極めて重要な意味を持つネタを提供している。
  • The World Until Yesterday, by Jared Diamond
    The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?本書はダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』ほど良い本ではない。しかしそんなことを言えば、あれに比肩する程の本はほぼ皆無なのだけれども。ダイアモンドは数々の魅力的な逸話を使って狩猟採集民の生活とはどのようなものか説明し、どの逸話が現代のライフスタイルに適用できそうか訊ねる。ダイアモンドはもったいぶった発表をしたり、部族生活を美化して描いたりはしない。ただベスト・プラクティスを見つけそれを共有したい。それだけだ。
  • Poor Numbers, by Morten Jerven
    Poor Numbers: How We Are Misled by African Development Statistics and What to Do About It (Cornell Studies in Political Economy)経済学者ジャルベンは、4年を費やしてアフリカの国々がどうやって統計を取るのか、そして統計数値をGDPに換算するときアフリカの国々がどんな困難に直面するのかについて丹念に調べ上げた。また、我々が正確だと考えていた多くのGDP測定値はそれとは程遠いものであると強く主張する。しかし、僕は僕自身の長いレビューの中で論じたのだけれど、そのことは成長の中で何が機能しているかについて我々が全くの無知であるということではない。
  • Why Does College Cost So Much?, by Robert B. Archibald and David H. Feldman
    Why Does College Cost So Much?本書の書名は、年を経るごとに関心の高まっていると思われる疑問だ。著者の長けている点は、非難することではなく代わりにアメリカの労働市場がいかに大学のコストに影響を及ぼしているかについて論じることだ。私見では、大卒者に希少性がある限り大学の学位には大いに価値がある。そうして人々は学位を得るためにもっとお金を払うようになる。そして人々がもっとお金を払うならば、単科大学や総合大学は---その労働は自身の学位に大金をつぎ込んだ人々によって多く供給されている---もっと多くのお金を要求することができる。大卒者が供給過剰になるまで、価格競争は起きない。

    答えは何か。アーチボルドとフェルドマンは役立ちそうな施策を数多く提示する。僕はテクノロジーを使って通信教育を改善すればコスト削減を後押しできると考える。単科大学や総合大学には非効率な部分や重複する部分があり、これを虱潰しにしようと思えば出来ることが山ほどある(物理学はいくつのクラスで教えられているのか、例えば、シカゴで。いくつかは統合しようと思えばできるのでは?)。本書は複雑な問題への有用な入門書である。
  • The Bet, by Paul Sabin
    The Bet (English Edition)世界は環境の激変に向かっているのか。この国民的論議をセイビンは記録する。パウル・エールリヒとジュリアン・シモン(人間の福祉は時が進むにつれ改善するのかそれとも悪化するのかに対して1,000ドルを賭けた人物)の話を中心に置く。セイビンはいずれかの主唱者をあざ笑うでもなく、両者の極端な見方がいかにして今日まで続く気候変動やその他の問題をめぐる二極化した議論の一因となったかを示してみせる。
この中で邦訳版があるのは以下の2冊のみだ。
コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

[元記事]
http://www.thegatesnotes.com/Personal/Best-Books-2013