「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。 - 河岸宏和

ラウンド1 某大手ファミレス・チェーン店
      「混ぜもの」をめいっぱい 
      入れたハンバーグ
□「汚い店にうまいものなし」
河岸 (席につくなり)この店はダメだよ。おいしくない。
―― まだ何も食べてないじゃないですか!?
河岸 だって入り口にゴミが落ちていたし、トイレもすごく臭い。ドアを開けるなり、猛烈な臭いがした。
―― たしかにトイレは変な臭いがしますね。
河岸 普通ではあんなことにはならない。あれはおそらく以前トイレが詰まって、床のタイルのあいだに入って染みついているんだと思う。腐敗臭がしている。ああなると、どんなに掃除をしてもとれないんだ。床材を全面的に取り替えないとダメ。
―― ここのスタッフは臭くないんですかね?
河岸 臭いというのは、ずっといると慣れちゃうから、それほど気にならなくなる。でも飲食店では、そんなことをいってはダメだよね。
―― でもだからって、この店がまずいとは限らないでしょう。
河岸 いや、衛生管理ができていない店がおいしいわけがない。
―― 「汚い店にうまいものなし」ということですか?
河岸 そう、店の掃除に気を配れないような店が、食材にまで気を配れるわけがない。考えてみれば当然だよね。お客さんのことをどう思っているかという話。

□「リン酸塩」の味がすごいハンバーグ
―― あっ、来ましたよ、ここの売りのひとつ「包み焼きハンバーク」です。
河岸 (一口食べて)う〜ん。
―― 微妙な顔ですね。
河岸 「混ぜもの」がすごいね、これは。「リン酸塩」の味がすごくする。増量のために「植物性タンパク」(後述)もかなり入っている。
―― 「リン酸塩」って食品添加物ですよね。添加物に味があるんですか
河岸 独特の苦みのような味がある。少量なら気にならないけど、さすがにこんなに入っていたらわかる。「pH調整剤」「乳化剤」「着色料」なんかも使っている。
―― 着色料? なぜハンバーグに色をつける必要があるんですか?
河岸 「植物性タンパク」をこれだけ入れたら、色が白っぽくなって、見た目がまずそうになってしまうでしょう。だから、「着色料」を入れて肉の色に近くしているの。
―― そんなにいっぱい入っているんですか。
河岸 ここまで「植物性タンパク」を入れたら、もう肉の味もしないでしょう。だから、ソースの味を思いっきり濃くしてごまかしている。
―― たしかにソースの味はかなり濃厚ですね。
河岸 このソースは「グルソー」(グルタミン酸ソーダ)が0・3%ほど入っているね。
―― 配合までわかるんですか! 0・3%ってどのぐらいの量ですか?
河岸 かつて「中華料理店症候群」というのが騒がれたことがあったでしょう。中華料理では「グルソー」が大量に使われるけれど、あれは1%ぐらい入っているの。ひとつの鍋に大さじ2杯ぐらいガサッと入れる。これはそこまではいかないけど、それに近い味だね。

□巧妙なメニューの書き方
 ――「US産ビーフ」「オージービーフ」は違う商品のこと

―― いろいろ混ぜるのは肉自体の味がまずいからですか?
河岸 いや、肉の味をごまかすというよりも、量を増やすためにやっているんでしょう。コスト削減のため。とはいっても、これは肉自体も何の肉を使っているかわからないね。
―― えっ、ハンバーグだからビーフなんじゃないんですか?
河岸 メニューを見てごらん。すぐ近くにあるサーロインステーキには「US産ビーフ」、ビーフハンバーグステーキには「オージービーフ使用」と書いてあるけど、ハンバーグには何も書いてないでしょう。

―― ホントだ……。メニューをよく見ないと、ごまかされますね。
河岸 ここがずるいというか巧妙なところ。たしかにハンバーグにも牛肉が一部は使われているだろうけど、そのほかにブラジル産鶏肉、アメリカ産豚肉も混ざっているかもしれない。
―― 僕には普通のビーフハンバーグとしか思えませんが……。それなりにおいしいですし。
河岸 ビーフ100%のハンバーグと食べ比べたらわかるよ。ソースの味でごまかされてしまうけど、本物を食べたら明らかに違う。この店は昔は「混ぜもの」なんか使っていなかったのに。
―― 付け合わせのブロッコリーはどうですか?
河岸 輸入ブロッコリーだろうけど、これは使い方が悪い。解凍したものをゆですぎているから、全然おいしくないね。
―― わざわざ輸入品を使うこともないのに。
河岸 そう。安いから使うんだけど、国産だってジャガイモなんか安くておいしいんだから、そういうのを出せばいいのにね。

□シーザーサラダのレタスは2〜3日前に切ったもの
―― ミックスピザはどうですか?
河岸 冷凍品をチンしただけ。チーズはニセモノの「チーズフード」(後述)。かなり小麦粉で増量している。チーズの味も風味もないよね。
―― ニセモノチーズですか……。
河岸 シーザーサラダは、クルトンがサクサクでなきゃいけないのに、へなっとしている。いつ焼いたものかわからない。なおかつレタスが論外。これは2〜3日前に切ったものだよ。
―― なぜ2〜3日前に切ったレタスだとわかるんですか?
河岸 レタスの端が茶色く変色しているでしょう。1日ではここまで茶色くならない。2日以上は経っていると思う。
―― あらかじめ大量につくって皿に盛っておいたものを出してきたんですかね?
河岸 そうかもしれない。ただ、チーズは注文が出てから、かけたと思う。チーズは生きていたから。
―― 野菜は、この店の厨房でカットしているんですか?
河岸 やってないね。真四角に切ってあったから、セントラルキッチンで四角く切って運んできたカット野菜でしょう。本当は、レタスは手でちぎらなくてはいけない。金気を嫌うから。包丁で切ると、変色しちゃう。でも、ここのレタスは真四角でしょう。
―― この店、ボロボロですね、決して安い値段の店ではないのに……。

□「メイプルソース」は明らかなごまかし
 ――「メイプルシロップ」とはどこにも書いていない

―― 最後に、デザートのデニッシュはいかがですか?
河岸 これね、「メイプルソース」ってメニューに書いてあるでしょう。これは明らかなごまかし。だって「メイプルシロップ」とはどこにも書いていない。
―― 言われてみれば、「メイプルシロップ」とは一言も書いていませんね。
河岸 メイプルシロップというのは、100%かえでの樹液のものでなければならないの。この「メイプルソース」というのは、メイプルシロップに安いガムシロップを混ぜて増量したもの。それをやると香りが飛んでしまうから、「香料」や「着色料」を入れてごまかしている。実際、メイプルシロップの香りもうまみもないでしょう。それをあたかも「メイプルシロップ」に見せかけて「メイプルソース」と謳っているのは、ごまかしとしか思えない。
―― メイプルシロップってスーパーでも結構高いですもんね。
河岸 メニューを見るだけでも、この店の「ごまかし体質」がよくわかるよ。さっきのハンバーグもそうだし、「北海道産帆立」とか「スペイン産生ハム」とか、自慢したいときだけ産地を明記してある。
―― ほんとだ。たしかに産地が書いてあるものと、そうでないものがありますね。
河岸 チキンステーキや豚肉のしょうが焼きには、産地が書いていないでしょう。理由は簡単。チキンはたぶんブラジル産、豚肉はたぶん台湾産かアメリカ産。「北海道産帆立」や「スペイン産生ハム」はイメージがいいから書くけど、「ブラジル産チキン」や「台湾産豚肉」はイメージが悪いので書かない。
―― ホントですね……。
河岸 このチェーン店は、昔はもっときちんとしていたのに。どこかで経営方針が「お客さん」から「儲け」にシフトしたんだろうね。残念。

 (食べ終わった感想)いまの外食店の実態をよく表している店
 この店のハンバーグはひどいものでした。
 「リン酸塩」を入れて思いっきりカサ増しをしてあります。「リン酸塩」は水を抱えるから、いくらでも増量できるのです。ひき肉に「リン酸塩」と水を入れて練れば、「リン酸塩」が水を抱え込んで膨らむわけです。 「リン酸塩」の独特の味がするし、食感がプリプリしているから、すぐわかります。それに練りすぎていて、もう肉の食感がしない。こんなに練ってはハンバーグではありません。ソーセージかチクワかという話です。肉のうまみがまったくしない。
 「植物性タンパク」の混ぜ具合もすごいの一言でした。
 これに「調味料(アミノ酸等)」や「肉エキス」で味をつけ、「着色料」で茶色に色をつけたら誰もが肉だと思ってしまう。下手をすれば、肉の割合は20%以下でしょう。これはもう「牛肉ハンバーグ」ではない、「植タン(植物性タンパク)ハンバーグ」とでもいうべきシロモノです。
 この店で頼んだもので唯一マシだったのはチキンのガーリックステーキでした。
 これは生の鶏のもも肉をガーリックソースと一緒に焼いたもので、店の厨房でつくっていました。何も変なことをしていないから、普通においしい。
 そうやって普通のことをやっていれば十分おいしいのに、なぜカサを増したり、数日前からつくり置きをしたり、おかしなことばかりするのでしょうか。
 そこにあるのは「儲かればいい」という姿勢でしかありません。
 おいしいものをお客さんに食べてもらおう、喜んでもらおうという姿勢がまったく感じられない店でした。
 ただし問題は、こんなひどいことをしているのが、この店だけではないということです。いまの外食店、とくに全国チェーンでは、このような変なことをする店が多くあります。
 この店は、いまの外食産業の姿を表しているひとつの典型例だといえるのです。
         (「衝撃の覆面食べ歩きレポート」は、このあと第4章に続きます)

【1.裏側はすごい!】業界最大のタブーを公開する!
●とても実名では書けない!衝撃の覆面食べ歩きレポート
・某居酒屋チェーン店「ほとんどニセモノ食品だね。ランチは夜の余り物を処分するためでは?」
・某イタリアン・チェーン店「このドリアはチーズとホワイトソースがひどい。イタリア人が食べたら怒り出すよ」 etc

●輸入野菜&ニセモノ食品&成型肉&添加物が使われ放題!
・9割は輸入野菜!2年前の米!添加物だらけの「ヘルシー和食メニュー」!
・立ち食いそばは小麦粉が8~9割!もはや「茶色いうどん」。だから安い!

【2.でも大丈夫!!】誰でも必ずできる「いい店」「おいしい料理」の見分け方!
●「見た目」だけで、ここまでわかる!
・焼き鳥は「ねぎま」を見ろ!──メニューにない店は冷凍やきとり!
・サラダは「レタス」に注目!──形が真四角なら仕入れ品のカット野菜!
・刺身は「角」を、回転寿司は「いか」を見ろ!──切りたて、店の実力は簡単にわかる! etc

●いい店、おいしい店は「ここ」で見分ける!
・【内装・外観】汚い店にうまいものなし!
・【客席】テーブルに箸立がある店はそれだけでNG
・【料理】生ビールと刺身がうまい店にはずれなし!飲み放題にうまい店なし! etc

覆面ルポは大爆笑&唖然!「ひと目」でわかるイラスト付で、すぐ役に立つ!
こんな本、いままでなかった!

★全国チェーンにもうまい店はある!──「何が他店と違うか」理由も詳しく解説!
カレー──大鍋ではなく小鍋で一人前ずつ温めている【カレーハウスCoCo壱番館】
ファミレス──店内調理にこだわる店はやはりおいしい【ロイヤルホスト
牛丼──素材のレベルはほぼ同じ。おいしさの差を分けるのは味付け【吉野屋】
定食──店の厨房で一つひとつ手づくりする店は流行っている【大戸屋
イタリア料理──野菜や肉・魚は日本の食材、チーズやハムは本場の食材を使用している【サルヴァトーレ・クオモ】
餃子・中華──包みたて、焼きたて、切りたて【餃子の王将】【バーミヤン
回転寿司──―店内でネタを切り、職人がオープンキッチンで握っている【がってん寿司】【スシロー】
うどん──店内で麺を打っている【丸亀製麺
トンカツ──厨房で肉をスライスし、パン粉をつけている【和幸】
ファストフード──やはり店内調理がカギ【ケンタッキー】【サブウェイ】【ミスタードーナツ
コーヒー──飲み物の温度管理がきちんとできている【スターバックス
ベーカリー──粉から手づくりしている【神戸屋】【ドンク】