【話の肖像画】 作家・西村京太郎

産経新聞の【話の肖像画】に作家の西村京太郎が登場した。

  1. 【話の肖像画】作家・西村京太郎(83)(1)
  2. 【話の肖像画】作家・西村京太郎(83)(2)
  3. 【話の肖像画】作家・西村京太郎(83)(3)
  4. 【話の肖像画】作家・西村京太郎(83)(4)
  5. 【話の肖像画】作家・西村京太郎(83)(5)


連載の第3回で気になる箇所があったので引用する。

 中学1年の夏休みのとき、疎開という形で群馬県高崎市に住む親類の元で過ごしたのですが、この家には本が2冊ありました。1冊は陸軍軍人だった桜井忠温の「肉弾」で、もう1冊はミステリー作家の甲賀三郎が書いた「姿なき怪盗」。毎日読んでいたけど、このうち特に「姿なき怪盗」の方が面白くて、何回も読みました。このときの経験が今につながっているのかもしれませんね。

西村京太郎もこの読書の仕方をしていたのだ。繰り返して同じ本を何度も読む、という体験をこの世代の人は必要に迫られて自然にしていた。同じ生年(1930年)の渡部昇一も同様のことをたしか『知的生活の方法』などで語っていた。
続いて、作家を志そうとしていた頃の話。

 このころ、松本清張さんが書かれた「点と線」を2時間で読み、「これくらいなら自分にも書けるな」と思ったのです。退職金などで2年ほど暮らせば、その間に何とかなるだろうと考えたのですが、この考えは甘かった。簡単に読めるのなら簡単に書けると思ったのですが、書くのと読むのとはちょっと違った。

さすが、西村京太郎。「点と線」を読んで、2年あればこのレベルの小説を書けると思っちゃうところに大物感が出ている。

第4回にも面白いエピソードがあったので引用する。

 実家には母親や妹たちがいたけど仕事を辞めたことは話さず、毎日スーツを着て仕事に行くふりをして、上野の図書館で作品を書いていました。でも、懸賞小説に応募してもなかなか成果は出ず、そのうちお金が無くなってパン屋に住み込みで働くことになったのです。本当のことを明かすと、母親は泣いていました。

上野の図書館で作品を書いてたなんて、ビッグネームとなった今では想像もできないが、西村も母親を泣かせたことがあるのだ。

古書ミステリー倶楽部II (光文社文庫)

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