免疫力をあなどるな - 矢粼雄一郎


本書、矢粼雄一郎著『免疫力をあなどるな』は、レビュープラス様からの献本です。

著者の矢粼氏は職業人生を外科医としてスタートした。だが、あるとき「外科医としての限界」を感じて職を辞す。そしてふらりバックパッカーの旅に出る。行き先はヨーロッパ。その半年間の自問自答の旅のあいだ持ち歩いていたのが『ゲノム』という本だ。それは「バイオテクノロジー(生物工学)の分野で何か新しいことをしたい」との思いから選んだ本だった。そして現在、著者はテラ株式会社の代表取締役。この会社は、樹状細胞を用いたがんワクチンの開発を行っている。願いは叶ったようだ。

本書の要旨を一言で述べれば、「健康にとって最も大切なもの、それは免疫力である」となる。それに一言付け加えるとすれば「人間の体で最も重要な臓器は腸である」となる。

人間の体を構成する細胞は60兆個。免疫細胞はそのうちの2兆個を占める。この細胞、全身に万遍なく存在すると思うかもしれないが、さにあらず。実はその70%が腸に存在する。だから健康にとって、腸は大事なのだ。

免疫には大きく分けて二種類ある。先天的に備わっている「自然免疫」と、後天的に獲得する「獲得免疫」だ。

免疫を軍隊に喩えて分類すれば、以下に示す通りである。

  • 第一部隊 (自然免疫)
    • 歩兵隊 --- マクロファージなど
    • 鉄砲隊 --- NK細胞
  • 第二部隊 (獲得免疫)
    • キラーT細胞
    • B細胞
    • ヘルパーT細胞

これらの部隊を取りまとめる司令塔となるのが「ボス細胞」すなわち「樹状細胞」である。

あまり書きすぎると内容を全て説明してしまいかねないので、あとは、目についた情報を箇条書きで挙げておくに留める。

  • 男性の精巣は免疫によってカバーされない
  • 「獲得免疫」を効果的に鍛えられるのは、二〇歳までである
  • 食生活の安定やストレスの軽減により「ボス細胞」を改善することは可能である
  • 昼寝や仮眠などの睡眠は、傷ついた「ボス細胞」を回復させる
  • 味噌汁などの発酵食品を摂ることは「ボス細胞」のトレーニングになる

矢粼雄一郎(やざき・ゆういちろう)
医師。テラ株式会社代表取締役
1972年、長野県生まれ。1996年に東海大学附属病院に外科医として勤めるも、「救えない命もある。そんな医療の限界をバイオテクノロジーで変えたい」と職を辞める。2003年、東京大学医科学研究所細胞プロセッシング寄付研究部門に研究員として勤務した後、2004年にテラ株式会社を設立。医師としての経験を生かし、免疫治療を行う全国の医師や研究者とともに研究会を発足させて、がん治療の発展に取り組んでいる。
特に樹状細胞ワクチン「バクセル」をはじめとしたがん免疫細胞治療の研究開発で注目を浴び、同分野のトップランナーとして、国内医療機関設備導入実績No.1、国内治療実績No.1、世界のがん抗原ランキングNo.1など輝かしい成果のもと、医師によるバイオベンチャーとしては、きわめて異例の早さでのJASDAQ上場を果たす。
「未来の医療」といわれる個別化医療、先制医療の実現をめざして奮闘する一方、「医療を創る」を合言葉にメディアにも多数出演し、活躍している。

免疫力をあなどるな!

免疫力をあなどるな!

目次
はじめに
第1章 健康になる人とならない人の秘密
    私たちは生まれつき、「身体を守る機能」を持っている
    なぜ優秀な働きマンほど風邪を引くのか?
    疲れたときほど「逆のこと」をするといい
    味噌汁を飲んでいる人ほど元気になる
    大切な人をがんで亡くして気づいた"外科医の限界"
    清潔すぎる人はボロボロの身体になる
    花粉症は「花粉の量」では発症しない
    三〇年前の大豆クッキーに秘められた真実
    「健康」をめざすより「健康体」をめざしなさい
    「免疫力」こそ健康の大黒柱と心得よ
第2章 免疫力を決定づける「要素」とは?
    私たちは生まれつき「軍隊」を持っている
    侵入を許さぬ連係プレーはこうしてできている
    なぜ、同じ家族でも風邪を引きやすい人、引きにくい人がいるのか?
    腸内環境が大事といわれる理由は「七〇パーセント」
    一日に一回と二回では、歯磨きの効果は段違い
    「汚れた血液」を抜けば健康になる
    毎日五〇〇〇個のがん細胞と闘う自然免疫
    「泥んこ遊び」は積極的にしたほうがいい
    「自然免疫」と「獲得免疫」で相乗効果を生み出しなさい
    すべての免疫は「樹状細胞」が握っている
    「ボス細胞」はトレーニングできるし、薬にもなる
第3章 免疫力は「ボス細胞」のコントロールで決まる
    亡くなった三日後にノーベル賞を受賞した男
    自分自身にワクチンを投与しつづけた驚きの結果とは?
    「アクセル」と「ブレーキ」の使いわけが何より大事
    不健康でも、あなたの身体そのものは悪くない!
    一〇〇日あれば、六〇兆個の細胞が強くなる
    水分補給は必ず「のどが渇く前」にやりなさい
    「トイレ」と「あくび」は絶対に我慢してはいけない
    たった一〇分の仮眠が免疫力を強くする
    ストレスフリーは「食事運動睡眠」でっくりなさい
第4章 免疫力が高まる生活習慣
    生活は「食」メイン、「運動」サブで考えなさい
    サプリメントには添加物がたくさん入っている
    朝食は免疫バランスを整える「最強ツール」である
    最高の健康食は「納豆キムチ」
    お風呂あがりのアイスはNG、ヨーグルトはOK
    野菜は香りが強いものを「皮ごと食べる」がペスト
    「野菜:肉」は「2:1」のバランスで食べなさい
    疲労回復のための肉は、「鶏肉」を選べ
    運動はやればやるほど効果はない
    ジョギングをするなら夜より朝がいい
    燃焼が「はじまった」タイミングで運動はやめなさい
    寝る直前に「初恋」のことを考えるといいのはなぜ?
    生活習慣に悩んだら「細胞の声」を間けばいい
    たった一本の髪の毛で未来の病気が見えてくる
    自分の身体を守れない人は、人切な人も守れない
    健康になれば人生は一二〇パーセント楽しくなる
おわりに