2015-01-14から1日間の記事一覧

第152回芥川賞候補その5 - 高尾長良「影媛」

波波迦の木の葉が緩(ゆっくり)と揺れている。彼女は襲衣(おすい)を肩まで滑(すべ)し、爪立って黒葛(つづら)巻の細刀を波波迦の木の枝に当て、押し切った。 宙に舞う糠の様な粉を払い退け、腰の帯に枝を挟み入れて彼女は手近の枝へと移った。 直截な…