2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ジミーの誕生日 - 猪瀬直樹

プロローグ あの独裁者ヒトラーを喜劇の王者チャップリンが鼻の下に口髭をつけて演じると、怒気に満ちた表情かひっくり返って、たちまち滑稽になる。ヒトラーは演劇的な存在だった。しゃべり方、敬礼の仕方、身振りに手振り、そのすべてが。だからチャップリ…

it is raining

英語ネイティブも、"it is raining" の "it" が何を指すのか考えることがあるんだ、ということをポール・オースターの『ガラスの街』(柴田元幸訳)を読んで知った。 それは "it is raining" "it is nitght" と言うときの "it" が指すものに似ている。その "…

「ですね」の蔓延

ポール・オースターの『ガラスの街』(柴田元幸訳)を読んでいたら、小生の嫌いな文中の「ですね」が登場し思わずムッとした。 「いいですか、私はですね、仕事の枠を限定する必要を悟ったのです。すべての結果が決定的なものとなるよう、十分小さな領域のな…

ヴィラネル

前にも述べたやうに、わたしは少年時代、名原広三郎訳の文庫本で読み、熱中し、夢中になった。その陶酔感は、やがて研究社の復刊本を借覧し、このヴィラネルを筆写したときもつづいた記憶がある。しかし中年男になって翻訳したときには醒めかけてゐて、もう…

アラブ人と文学

岡 もう一つ別の視点から言うと、アラブ文学をやっていると、小説っていったい何なんだろうという問いを抱かざるを得ないんです。たとえば英米文学とかフランス文学の場合、テクストがそこにあり、それを読むことで作家論や作品論が語られる。ところがアラブ…

ガラスの街 - ポール・オースター

モンテーニュの『エセー』について、小生は書名を知っているのみだった。ポール・オースターの『ガラスの街』を読んで初めて、「レーモン・スボンの弁護」(第二巻第十二章)という有名な長篇の存在を知った。 Cranks and ideologues, however, were not the…

2009年全米図書賞

フィクション部門 Let the Great World Spin: A Novel作者: Colum McCann出版社/メーカー: Random House発売日: 2009/06/23メディア: ハードカバー クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る ノンフィクション部門 The First Tycoon: The Epic Life o…

オルハン・パムク

『わたしの名は「紅」』や『雪』で知られるトルコのノーベル賞作家オルハン・パムク氏の新刊の英訳版("The Museum of Innocence")が発売され、話題になっているようです。なんでも、今回は恋愛小説で、パムク氏は執筆の前に他の恋愛小説を色々と読み漁り研…

グラッドウェルの Igon Value 問題

『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)』や『天才! 成功する人々の法則』の著作で知られるマルコム・グラッドウェルの新刊 "What the Dog Saw: And Other Adventures" をスティーブン・ピンカーが New York T…

裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける - 山口絵理子

プロローグ それがすべての始まりだった 私は、株式会社マザーハウスという会社の代表取締役社長兼デザイナーをしている。2006年3月、24歳の時、 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」 という理念のもと、現在バングラデシュという「アジア最貧国…

勝間とカツマー

『関係する女 所有する男 (講談社現代新書)』の斎藤環氏が勝間和代ブームについて記事を書いている。 だから「カツマー」たちのほとんどは、自己啓発のほうに夢中で、社会的な問題意識ははっきりいって乏しい。あえてこう断言するのは「私は違う」という声が…

グラーグ57 - トム・ロブ・スミス

ソヴィエト連邦 モスクワ 一九四九年六月三日 ジェカブス・ドロズドフはカラチの橋を爆破したことがある。大祖国戦争中のことスターリングラードを守るためだった。ダイナマイトで工場も粉々にし、防御しきれない製油所は炎上させ、石油の火柱で地平線を切り…

タタール人の砂漠 - ディーノ・ブッツァーティ

希望の控えの間 イェフゲニア・クラスノヴァにとって、一人の人は一冊の本しか愛せない。多くても数冊までだ。それ以上は乱交の一種だ。本を商品として語る連中はまがいものだ。やたらとお友だちを増やしたがる連中は浅い付き合いしかできないのと同じである…

『FREE』邦訳版刊行記念!1万人限定無料公開

特設サイト『フリーミアム.jp』にアクセスし、メールアドレスかtwitterのアカウント名などを入力して、簡単な選択式のアンケートに答えると、サイト上で閲覧可能になります。おはやめに。(11月25日18:00まで) Googleをはじめ、フリー(無料)を使ったデジ…

金融危機後の世界 - ジャック・アタリ

1……史上初のグローバル金融危機 人類は、いつの時代も、宗教的・道徳的・政治的・経済的な危機を乗り越えてきた。とくに資本主義が「勝利」してからは、むしろ経済的な危機が頻発し慣れっこになってしまい、当然のことのように乗り越えてきたという観さえあ…

2009 Amazon Top 100 Editors' Picks

Let the Great World Spin: A Novel作者: Colum McCann出版社/メーカー: Random House発売日: 2009/06/23メディア: ハードカバー クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る Strength in What Remains作者: Tracy Kidder出版社/メーカー: Random House…

ノーフォールト - 岡井崇

ドラマ『ギネ 産婦人科の女たち』の原作本。 第1章 グレードA力イザー 平成十五年十月十四日 午前二時二十分 当直室 「ピー、ピー、ピーー、ピーーー、ピーーーー」 目を開けた奈智はふうーっと一つ長い吐息をついて、視線を電子音のするモニターに向けた…

Kindle For PCリリース

アマゾンからPC用Kindle(ソフトウェア)がリリースされた。 http://www.amazon.com/KindleforPC これで、Kindleを買わずともKindle本が読める! (検索用)Amazon、キンドル

掏摸 - 中村文則

1 まだ僕が小さかった頃、行為の途中、よく失敗をした。 混んでいる店内や、他人の家で、密かに手につかんだものをよく落とした。他人のものは、僕の手の中で、馴染むことのない異物としてあった。本来ふれるべきでない接点が僕を拒否するように、異物は微…

現代詩

谷川 ある時期まで現代詩というのが本当に読まれていないというのが気になって、自分自身少しでも読者を増やしたいという気持ちがありました。だけど今は自分の本が読まれているせいか冷たくなっちゃって、極端に言えば「現代詩、どうでもいいや」みたいな(…

ジェイソン・ムラーズのビューティフル・メス~ライヴ・オン・アース

11月25日、ジェイソン・ムラーズがライブCD+DVDをリリースする。 本作には2009年北米ツアー"Gratitude Cafe Tour"から8/13に行われたシカゴ Chaarte One Pavilionでのライヴが収録されている。今年小生が行ったムラーズのライブ(2月23日;@CCレモンホール)…

ですね中毒

最近、「ですね」をやたらと使う風潮が蔓延している。文末に「ですね」をつけるのではなく、文中につけるのだ。耳障りなことこの上ない。 例えば、こんな感じだ。 〜はですね、〜。 〜がですね、〜。 〜にですね、〜。 ところがですね、〜。 小生は、これを…

ファウストと現代日本人

もともと、或る書物が古典という名誉ある地位に上ったのには、それが時代を越えた価値を有しているという面もあろうが、運よく火災その他の災害を免れて、今日に伝えられているという面もある。その古典が書かれた時代にも、他に多くの本が書かれたのであろ…

ゴンクール賞に初の黒人女性=仏

【パリ時事】フランスを代表する文学賞のゴンクール賞に2日、セネガル系フランス人の作家マリー・ンディアイさん(42)の小説「トロワ・ファム・ピュイサント(3人の強い女)」が選ばれた。同賞を黒人女性が受賞するのは初めて。 受賞作は、アフリカと旧宗主…

小説の諸相 - E.M.フォースター

講釈の威力を知るために次の文章を見て欲しい。「王が死んだ。女王が死んだ」。これを「王が死んだ。それから女王が悲しみのあまり死んだ」と比べてみよう。これは作家のE・M・フォースターが、情報を並べただけなのと話の筋の違いを示すためにつくったも…

新・三銃士が大人気

⇒人形劇「新・三銃士」が大河ドラマ抜いた、HPアクセス数がトップに。 | Narinari.comやはりというか何というか、NHKの『新・三銃士』が大人気のようだ。 見てて面白いもんなぁ。

週刊ダイヤモンド

今週の『週刊ダイヤモンド』に、ジャック・アタリ氏と勝間和代氏の対談が掲載されている。キーワードは、次の3つ。 利他主義 人口政策 マイクロファイナンス 週刊 ダイヤモンド 2009年 11/7号 [雑誌]出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2009/11/02メデ…

承認欲求?

「承認欲求」という言葉がある。 マズローの欲求階層説でよく使われる言葉だ。 小生はこの「承認欲求」という言葉が大嫌いである。 「承認欲求」とは「他者から、独立した個人として認めらたい」という「欲求」を指す。 ところで、「承認する」と「認める」…