2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

箱根制覇の背中を押した男

(前略)青学大は箱根から28年も遠ざかっていた。原によれば、ゼロからというよりもマイナスからのスタート」。出場を果たしたのは監督就任5年目だった。 2012年は5位、13年は8位、14年は5位と着実に力をつけ、強豪の仲間入りを果たした。 頂…

第152回芥川賞候補その5 - 高尾長良「影媛」

波波迦の木の葉が緩(ゆっくり)と揺れている。彼女は襲衣(おすい)を肩まで滑(すべ)し、爪立って黒葛(つづら)巻の細刀を波波迦の木の枝に当て、押し切った。 宙に舞う糠の様な粉を払い退け、腰の帯に枝を挟み入れて彼女は手近の枝へと移った。 直截な…

第152回芥川賞候補その4 - 小谷野敦「ヌエのいた家」

ヌエは、私の父である。いや、あったと言うべきか。 母は、六十七歳でがんが発見されて、一年で死んだ。発見された時は、もう手術はできず、築地のがんセンターへ通って抗がん剤治療を受けていたが、効かなかった。実家の隣りの町の病院に二ヶ月ほど入院した…

第152回芥川賞候補その3 - 高橋弘希「指の骨」

黄色い街道がどこまでも伸びていた。 その道がどこへ繋がっているのか、私は知らない。サラモウアには繋がっていないのかもしれない。しかしいずれにせよ、我々はその道を歩くしかなかった。 尤も、私はもう歩くことを止めていた。街道沿いの、一本の欅に似…

第152回芥川賞候補その2 - 上田岳弘「惑星」

Title From 2014/4/7 To 幾つもの扉が叩かれる。東京代々木の先端医療を施す総合病院の、イスタンブールの壮麗な寺院脇にひっそり建つ朽ちかけたアパートの、あるいはカリフォルニア州サンノゼのメガベンチャー企業の社長室において。それはまぎれもない契機…

第152回芥川賞候補その1 - 小野正嗣「九年前の祈り」

渡辺ミツさんのところの息子さんが病気らしい。母がそう言うのが聞こえたとき、さっきから喋り続ける母を無視して携帯の画面を見るともなく眺めていた安藤さなえを包んだのは、柔らかい雨のような懐かしさだった。 「みっちゃん姉!」とさなえはささやいた。…

指示の病

最近、気になっているのが、日本語における「指示の病」の流行だ。もちろん、これは「不治の病」に引っ掛けた自作の造語だが、この病が蔓延していることを感じることが多い。 では、「指示の病」とは何か。具体的な例を上げてみよう。まず、最近の本を一冊手…

イエス・キリストは実在したのか? - レザー・アスラン

以前 レザー・アスラン博士の記事を書いたが、昨年7月に翻訳書が出版されていたので、紹介しておく。 革命のエネルギーに満ちていた一世紀のパレスチナ 「ナザレのイエス」と呼ばれた人物について、何か一つでも知ることは奇跡に近い。世も終わりだと叫びな…

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。