2010-01-01から1年間の記事一覧

サンデルの政治哲学 - 小林正弥

今年の4月〜6月にNHKで放送された『ハーバード白熱教室』で有名になったサンデル教授の政治哲学について、千葉大学の小林教授が解説したもの。 本書は6講構成をとっている。第一講はハーバード講義の解説、第二講〜第五講までは、サンデルの著作の解説であ…

誰も語らなかった防衛産業 - 桜林美佐

『WiLL (ウィル) 2011年 02月号 [雑誌]』で渡部昇一氏と対談していた桜林美佐氏の著書。対談の冒頭で、刊行のタイミングが良かった、と渡部氏が述べていた。 <<はじめに>> テレビで誰かが言っていた。 「町工場は日本の宝です! 守らなくてはいけません」 し…

告発・現代の人身売買 - デイヴィッド・バットストーン

人身売買は暗がりにはびこるものです。しかも、自分とは無関係の場所で、無関係の他人に起きることだと考えがちです。けれども実はそうではない。人身売買という犯罪には地球上すべての国がかかわっており、わが国も例外ではありません。―― ヒラリー・ローダ…

墓標なき草原 - 楊海英

第14回司馬遼太郎賞受賞作。著者は静岡大学教授の楊海英氏(内モンゴル出身)。本書は文化大革命時に内モンゴルであった迫害の実態をあぶり出す民族誌。 何故、中国にもモンゴル人がいるのだろうか。今、モンゴルといえば、朝青龍と白鵬という二人の横綱の…

ダンテ『神曲』講義 - 平川祐弘

本書は平川氏が2007年4月から1年間、荻窪の読売文化センターで行なった社会人向けのレクチャーをまとめた講義録。月に二回、第二・第四土曜の一時半から三時まで、合計二十四回講義したものに「まえがき」を付した上で、本体の講義部分を二十五回に分けて整…

不合理だからすべてがうまくいく - ダン・アリエリー

第1章 高い報酬は逆効果 なぜ巨額のボーナスに効果があるとは限らないのか あなたは、まるまるとした幸せな、実験用ラットだ。ある日、あなたがわが家と呼んでいる心地よい箱から、手袋をはめた人間の手でそうっとつまみ出され、あまり居心地のよくない、別…

人間はガジェットではない - ジャロン・ラニアー

人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice)作者: ジャロンラニアー,井口耕二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/12/16メディア: 新書購入: 4人 クリック: 462回この商品を含むブログ (36件) を見る第1部 人とは何か 第1章 人の欠落 第2章 自己放棄の…

フリーラジカルは老化の原因ではないかもしれない

ニュース記事 Mutant worms defy aging theory | CBC News からの引用(拙訳)。 マギル大学の研究者が遺伝子操作した線虫は、禁止毒物に曝されても死ななかったばかりか、通常の線虫よりも長生きした。これは科学者たちの老化プロセス理解に対する挑戦だ。 …

安部公房を読む - 苅部直

今号の『群像』誌で新しい連載(「安部公房を読む」苅部直)が始まった。 気鋭の政治学者による安部公房読解だ。これがどのようなものになるか非常に楽しみだ。第一回目のテーマは「夢の不安」。『笑う月』を中心に論を進めていく。まず氏が安部公房作品に初…

KAGEROU - 齋藤智裕

何十万という人間がひしめきあって暮らすこの街で、誰もいない暗くて静かな〝寂しい場所〟を見つけるのは至難のワザだ。しかしヤスオが見つけたこの場所は奇跡的にその条件をほぼ完璧に満たしていた。 そこは三年ほど前に倒産して廃墟と化した古いデパートの…

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)作者: 中嶋嶺雄出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2010/12/09メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 76回この商品を含むブログ (20件) を見る秋田の地に“奇跡”が起きた! 就職率100%の理由を探る 英語力・教…

それでもなお、

それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条~私の大好きなことば- 勝間和代公式ブログ: 私的なことがらを記録しよう!! 勝間氏のエントリーを読んで原文が気になったので、メモ。 逆説の十か条The Paradoxical Commandments 人は…

Bunn Trifecta

スターバックスに買収されてしまった Clover の話は日本でもよく見かけるが、これに対抗して今年の2月に売り出された Bunn 社の Trifecta の話は見かけない。海外のサイトを調べたところ、'04世界バリスタチャンピオンの Tim Wendelboe 氏が実際に試用してみ…

ランドラッシュ - NHK食料危機取材班

プロローグ 農地争奪(ランドラッシュ)時代の幕開け 自動小銃で守られる農地 それは、異様な光景だった。 旧ソビエト連邦・ウクライナ。世界一肥沃と言われる大地に恵まれながら、ソ連崩壊後の混乱で、広大な農地が放棄されている。 その農地をイギリス企業が…

SENSE - Mr.Children

ようやく発売されたミスチルのニュー・アルバム『SENSE』を聴いた。今回は、ヘビロテは無いな、と思った。この落胆は『シフクノオト』以来だ。 原因はテンションの低い曲が多いこと。さらに、桜井の声の感じと、キーボードの調子がズレている箇所が多いよう…

au androidのSkypeアプリ

「月額8円で持てる」ということで au の IS01 が最近話題になった。そして先日、au android ケータイ専用の Skype アプリが公開された。そのアプリの説明に重大なことが書いてある。 ※Wi-Fi のみで接続されている場合、Skype 通話はご利用いただけません。 …

ExtractMojo

海外のサイトを見ていると、コーヒーの味を科学的に分析する動きが出てきていることに気づく。コーヒーの味を決める2つの指標は (1)浸出強度(またはTDS)と、(2)抽出率だという。この根拠となっているのは '60年代に行われた研究(化学者 Ernest E. Lockha…

K-ONEとV60とモカマスターと

コーヒー抽出用フィルター K-ONE(米オレゴン州ポートランドの名店 Coava の Keith Gehrke 氏により設計された)を他の器具と組み合わせる実験をしたというブログ記事を見つけた。 実験を行ったのは Tim Styles 氏。 ハリオの V60 Technivorm Moccamaster KB…

IFFT interiorlifestyle living

25日、東京ビッグサイトで開催された IFFT interiorlifestyle living に行ってきた。 カプチーノ対決 出場者は6名だった。 松田拓也 (有)いしかわ/Cao Cafe 吉村直也 Bar Sorriso(バール・ソッリーソ)/Bar Sorriso 田中裕樹 (株)シャノアール/カフェ・…

暴力装置

池田氏がブログで引用していた箇所(マックス・ウェーバー『職業としての政治』)と当該原文と当該英訳文を参考のため、掲載しておく。 国家とは、ある一定の領域の内部で正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である。国家以外のすべ…

Casa BRUTUS 2010年 12月号

Casa BRUTUS の今月号はコーヒー特集だ。アメリカのコーヒーブームのサードウェイブ(第3の波)について掘り下げている。 コーヒー店がたくさん掲載されている。Four Barrel Coffee や Blue Bottle Coffee や Sightglass Coffee だ。 ニューヨークで最も予…

Michel Houellebecq

『素粒子 (ちくま文庫)』や『プラットフォーム』で有名なフランス作家 Michel Houellebecq(ミシェル・ウエルベック)の新刊 La carte et le territoire が9月に上梓された。ウエルベックは、かの悪名高い発言“Et la religion la plus con, c’est quand même…

接続助詞「が」の濫用

今から51年前、清水幾太郎は『論文の書き方 (岩波新書)』で、接続助詞「が」の濫用について警告した。ところが「が」の蔓延はとどまるところを知らぬようだ。テレビを見ても本を読んでも会議や雑談を聞いてもこれに遭遇しない日はない。インターネットは素人…

ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2010

フィナンシャル・タイムズ&ゴールドマン・サックスが選ぶ、ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2010。受賞作はラグラム・ラジャン『Fault Lines: How Hidden Fractures Still Threaten the World Economy』だった。ショートリスト5作のうち、既刊の邦訳は以…

体温を上げると健康になる 実践編 - 齋藤真嗣

70万部を超えるベストセラー本『体温を上げると健康になる』の続編である『同 実践編』が上梓された。『実践編』の冒頭は、新婚の女性が罹りやすい膀胱炎の原因が、実は低体温だった、という内容から始まる。内容を大きく分けて紹介すると、以下の通りだ。…

Fall of Giants - Ken Follett Tweet

『針の眼』(1978)や『大聖堂』(1989,2007)で有名な英国作家ケン・フォレット氏が、新刊 Fall of Giants を上梓した。この歴史小説は、新たに始まる「世紀」三部作の第一作だという。作中の登場人物は、アメリカ人、イングランド人、スコットランド人、フラン…

中国古典からの発想 - 加藤徹

ぱらぱらとめくるといろいろと自分の知らないことにでくわす本。それはたとえば、以下のようなこと。 「ローマの休日(Roman holiday)」は英語で「残酷な見せ物」の意 「灌腸」とは便秘のときにやるあの浣腸でもあるが、料理の名前(ブタの腸の中にに物を注…

完全なる証明 - マーシャ・ガッセン

ミレニアム会議 数はすべての人に魔法をかける。わけても数学者は、数に意味を吹き込むという行為の虜になりがちだ。それを思えば、二〇〇〇年という年に、世界的な数学者たちがパリに集まり、その会議を開いたのも不思議ではない。数学者たちはその会議が、…

雪冤 - 大門剛明

第29回「横溝正史ミステリ大賞」受賞作。 本作はタイトル通り「冤罪」を主眼としたミステリ小説だ。文章は拙いが、意欲と、訴えたいことだけは伝わってきた。テーマが大きいし、一応、最後まで読めた。魅力的なのは、イアン・ランキンや西村京太郎の小説と同…

インパラの朝 - 中村安希

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日作者: 中村安希出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/11/13メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 57回この商品を含むブログ (37件) を見る序章 向かう世界 第1章 ささやきを聴く—ヒマラヤ山系 第2章 カオス—東…