「それがですね」

ダン・ブラウンの『ロスト・シンボル 上』を読んでいたら、「それがですね」に出くわした。

それがですね」上階の部下が返答した。「SBB13は手書きで"個人使用"というメモがあったんです。ずいぶん昔のものですが、建築監ご自身が署名をなさっていますね」

(上巻 196-197頁)

Well, sir,” the voice replied, “I’ve got a handwritten notation here that designates SBB Thirteen as ‘private.’
It was a long time ago, but it’s written and initialed by the Architect himself.”


そもそも「それがですね」は、「それが」を、さも丁寧に話しているかように、取り繕っているだけだ。普通の常識を備えた人間は、上司に向かって「それが」なんて言わないし、言うべきでない。たとえ「」を「ですね」に替えたとしてもだ。この点で越前氏の翻訳に承伏しかねた。