現代プレミア ノンフィクションと教養 - 佐藤優・編

→ 加藤陽子 ノンフィクション100選
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総合ベスト10

  1. 日本共産党の研究立花隆講談社文庫/全3巻
    1922年の党成立から戦時下の弾圧による崩壊までを記録した戦前の日本共産党通史。コミンテルンの支配、リンチ事件――当時の関係者の証言も交え膨大な資料を渉猟、共産党の激動の歴史を活写する
  2. 戦艦大和ノ最期吉田満講談社文芸文庫
    1945年3月29日、世界最大の不沈戦艦といわれた「大和」は呉軍港を出港した。学徒出身の若き海軍少尉として「大和」に乗り組んだ著者が巨大戦艦撃沈のさまを敗戦直後に克明に綴った手記
  3. レイテ戦記大岡昇平/中公文庫/全3巻
    太平洋戦争の“天王山”レイテ島に展開された日米両軍の死闘。膨大な資料を駆使して、精細かつ巨視的に、戦闘の姿を記録する。戦争と人間の問題を鎮魂の祈りを込めて描き切る戦記文学
  4. 昭和史発掘松本清張/文春文庫/全9巻
    政界に絡む事件の捜査中に起きた「石田検事の怪死」、部落問題を真正面から取り上げた「北原二等卒の直訴」など昭和初期の埋もれた事実に光をあてる。未発表資料と綿密な取材で描く圧巻の作品群
  5. 誘拐本田靖春ちくま文庫
    東京オリンピックを翌年に控えた1963年、東京の下町で起きた幼児誘拐殺害、吉展ちゃん事件。犯人を凶行に走らせたものはなにか。貧困と高度成長が交錯する都会の片隅に生きる人間の姿を描く
  6. ベスト&ブライテスト』D・ハルバースタム朝日文庫/全3巻
    ケネディ大統領が政権に招集した「最良にしてもっとも聡明な人々」。彼らエリートたちはなぜ米国をベトナム戦争の泥沼に引きずり込んだのか。賢者たちの愚行を綿密な取材で追跡する現代の叙事詩
  7. テロルの決算沢木耕太郎/文春文庫
    1960年、社会党浅沼稲次郎委員長は17歳の右翼の少年山口二矢に刺殺された。政治の季節に邂逅した2人が激しく交錯する一瞬までを、臨場感あふれるシーンを積み重ねて物語へと結晶させた
  8. 苦海浄土 わが水俣病石牟礼道子講談社文庫
    チッソの工場廃水の水銀が引き起こした文明の病・水俣病。この地に育った著者が聞き書きの形をとって患者とその家族たちの魂を物語る。極限状況を超えて光芒を放つ人間の美しさを鮮やかに描き出した
  9. サンダカン八番娼館山崎朋子/文春文庫
    戦前の日本では、10歳に満たない少女たちが海外に身を売られ南方の娼館で働かされていた。天草のおサキさんから聞き取った話には「からゆきさん」の過酷な生活と無残な境涯映し出されていた
  10. 自動車絶望工場 ある季節工の日記鎌田慧講談社文庫
    高度経済成長期の自動車工場。花形産業の象徴であるはずの工場では労働者が日々絶望的に続くベルトコンベア作業に追われていた。現場に飛び込み自ら働いた体験を再現したルポルタージュ。今こそ必読

加藤陽子 ノンフィクション100選

ベスト10
  • 野中広務 差別と権力魚住昭講談社文庫
    田中角栄により確立された日本型所得再分配のシステム、それを支えた野中広務伝の決定版。法律の裏面を読み抜き、相手陣営の切り崩しに果敢に挑む野中の行動と倫理に対し深い共感を覚えている自分に驚く
  • レイテ戦記大岡昇平/中公文庫/全3巻
    35歳で召集されフィリピンはミンドロ島に連れていかれた老兵が日米の史料を駆使して描いた戦。愚かな作戦であったとは書いても、愚かな日本軍であったとは書けない作者のまなざしもまた魅力的
  • アメリカの影加藤典洋講談社学術文庫
    アメリカの原爆製造計画が実のところ日本への投下を当初から織り込み済みであったのではないか、との問いは衝撃的であった。日本の知識人は高齢化すると何故右への情熱の虜となるのかとの問いも今なお新鮮
  • 淋しき越山会の女王児玉隆也岩波現代文庫
    表題作は、同時に発表された立花隆田中角栄研究 その金脈と人脈』に比べ、湿度を感じさせる文体。佐藤昭の故郷・新潟県柏崎の風土を思わせる。著者の38歳での早逝が惜しまれる
  • 国家の罠佐藤優新潮文庫
    外務省欧亜局とは別の筋で対ロ情報活動に従事してきた著者逮捕劇の政治的な舞台裏を活写。情報に関わってきた著者の力の程は、この本一冊で世の中の見方を一変させた手腕からも折り紙付
  • 阿片王 満州の夜と霧佐野眞一新潮文庫
    上海をベースとする阿片取引で軍機密費を一人叩き出していた魔王・里見甫の生涯を追った評伝。里見が敗戦後直ちに中華航空機で日本に舞い戻れた一件自体、開拓団の悲惨さを考える時、感無量
  • 昭和天皇』(第一部、第二部)福田和也/文春文庫(文藝春秋
    「彼の人」という主語を編み出すことで、天皇にまつわる敬語表現の桎梏を脱し、史料の博捜から昭和天皇の「さびしさ」を描く。いまだ連載中だが、昭和天皇ものの決定版となるのではないか
  • 不当逮捕本田靖春講談社文庫
    検察・政界に手を突っ込み大胆に情報を得て昭電疑獄などの特ダネをものにした読売新聞社会部の伝説の記者・立松和博の栄光とその死を追う。読者は立松の姿が本田自身の姿と重なるのに気づかざるをえない
  • 昭和史発掘松本清張/文春文庫/全9巻
    蹶起将校側、鎮圧側双方の新史料を博捜し、透徹した人間観察に裏打ちされた目で斬った二・二六事件像は他の追随を許さない。佐分利貞男公使の怪死、スパイMの謀略等についても秀逸(新装版)
  • 夜の食国(よるのおすくに)吉田司白水社
    日本という国が東アジアにあることの重さと宿命を、海の民・山の民の守護神・月讀命(つくよみのみこと)の系列の思想を、古典に遡りつつ、古層に沈んだ日本の周辺地域の語りから蘇らせた傑作
和書 翻訳書

佐藤優 ノンフィクション100選

ベスト10
  1. 露国及び露人研究』大庭柯公/中公文庫
    ロシア社会に深く入り込み、ロシア人の気質と内在的論理を解明した名著。ロシアの帝国主義が、独自の地政学から生じていることを的確に指摘。ロシア事情について本書の水準を超える著作は未だ現れていない
  2. ルイ・ボナパルトのブリュメール18日カール・マルクス平凡社ライブラリー
    代表を選出する人々と代表する人の間に客観的連関が存在しないことを見事に描き出している。本書を読めば、小泉純一郎氏に対して国民が熱狂し、弱肉強食の新自由主義路線が日本社会に定着した筋道がわかる
  3. 日の丸アワー』池田徳真/中公新書 545
    太平洋戦争中、敵軍捕虜を使った謀略放送に関する回想記。日本独自のインテリジェンスを学ぶのに最適。著者は、徳川最後の将軍慶喜の孫で、英オックスフォードで旧約聖書神学を学んだ変わり種。副題『対米謀略放送物語』
  4. 甘粕正彦 乱心の曠野佐野眞一新潮文庫(新潮社)
    軍隊という巨大官僚組織に翻弄された甘粕正彦の姿が見事に描かれている。あの時代に生まれていれば、評者も甘粕のような人生を送ったのではないかと思い、背筋に寒気が走った
  5. 野中広務 差別と権力魚住昭講談社文庫
    被差別部落出身の保守政治家で、同化主義者であるにもかかわらず、人生の節目節目で差別に直面した野中氏を通じ、嫉妬、差別を克服することができない日本の政治の病理を見事に描いている
  6. 日本共産党の研究』(全3巻)立花隆講談社文庫
    日本共産党の公式党史よりもずっと説得力がある。日本共産党が、天皇制と対峙する過程で、日本の国家と社会を特定の鋳型にあてはめ、日本はこの鋳型から抜け出せないと見なす思想の原形がわかる
  7. 窮乏の農村 踏査報告』猪俣津南雄/岩波文庫 白 150-1
    貧困問題に関する優れたルポルタージュコミンテルン共産主義インターナショナル)の方針と一線を画し、実地調査と自らの頭で考えるという猪俣の手法に、労農派マルクス主義の良心を見る
  8. 相撲島 古典相撲たぎつ日』飯田辰彦/ハーベスト出版
    二番勝負で、最初の勝利者が二回目は「勝ちを譲る」古典相撲に隠岐の島(島後)の地域共同体を活性化するとともに紛争を避ける知恵を見る。竹島問題にもこの方法が応用できると思う
  9. モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』エフライム・ハレヴィ/河野純治・訳/光文社
    ヨルダンとの和平交渉のように利害が敵対する陣営に信頼できる友人をもつことの重要さがわかる。また、情報や分析は、それを政治的に使う意志を国家が持つときのみ、真価を発揮する
  10. 地上げ屋 突破者それから宮崎学幻冬舎アウトロー文庫
    抜群に面白い。金銭欲の前で人間が変貌する姿に戦慄した。特に左翼活動家が金銭を崇拝するようになると、おそろしい性格に変貌することがよくわかる。それとともに悪徳弁護士の怖さがよくわかった
和書 翻訳書

佐野眞一 ノンフィクション100選

ベスト10 古典 社会
現代プレミア ノンフィクションと教養(講談社MOOK)

現代プレミア ノンフィクションと教養(講談社MOOK)

目次 巻頭宣言・ノンフィクションの逆襲 ノンフィクションと教養【第1部】傑作・名作・記念碑・金字塔「100冊×10人」セレクション 加藤陽子×佐藤優×佐野眞一 広大で豊穣なる世界へ、ようこそ 総合ベスト10 加藤陽子の100冊/佐藤優の100冊/佐野眞一の100冊/岩瀬達哉の100冊/魚住昭の100冊/重松清の100冊/二宮清純の100冊/野村進の100冊/原武史の100冊/保阪正康の100冊 ノンフィクションと教養【第2部】 いとうせいこう×武田徹×重松清 ネット時代のノンフィクション その可能性と課題 佐藤優「現場報告記」 リアル書店・ネット書店・取り次ぎで何が起こっているか 八重洲ブックセンタージュンク堂書店トーハン三省堂書店/アマゾン ジャパン/丸善 体験的ノンフィクション論 アーサー・ビナード/麻木久仁子雨宮処凛飯尾潤生島ヒロシいしかわじゅん潮匡人宇都宮健児/大城立裕/片山善博児玉清酒井順子白石一文鈴木邦男竹内洋武田徹立川談四楼為末大長妻昭中村うさぎ/夏原武/野口悠紀雄福原義春藤原帰一堀尾正明宗像紀夫茂木健一郎森毅/箭内昇/山折哲雄 ジャーナリズムは機能しているか 花田紀凱 新聞は「書かないこと」が多すぎる/田崎史郎 政治報道─活字がテレビに敗北した日/長谷川幸洋 新聞記者は「役所のポチ」になるなかれ/南丘喜八郎 商業主義に背を向けた「零細出版社」の挑戦/辰濃哲郎 かくして朝日新聞の牙は抜かれた メイキング・オブ『死刑執行』 青木理 『死刑執行 絞首台の現実』特別編 控訴を取り下げた死刑囚からの手紙 副島隆彦×佐藤優「暴走国家」