第154回芥川賞受賞作2 死んでいない者 - 滝口悠生

川からそう離れていない畑のなかの一軒の家にはまだ明かりが点いていて、砂利敷きの庭に屋内から漏れる蛍光灯の白い明かりが漏れてぼんやりと照っている。 庭に面した緑側で機材を前にあぐらをかきヘッドフォンをした美之は、今さっき寺から響いてきた鐘の音…

第154回芥川賞受賞作1 異類婚姻譚(いるいこんいんたん) - 本谷有希子

ハコネちゃんは、もぐもぐ口を動かしながら言った。 そうだ、おねえさん、蛇ボールの話、知ってます? 私、それ、何で読んだのかなあ。昔、誰かに教えてもらったんだっけかなあ。二匹の蛇がね、相手のしっぽをお互い、共食いしていくんです。どんどんどんど…

仏教思想のゼロポイント―「悟り」とは何か― - 魚川祐司

無我 では、三相の最後、「無我(anattan)」についてはどうだろう。この無我という概念の内実については、輪廻思想との絡みで第四章において詳しく論ずることになるが、この場で必要なだけの定義を与えておけば、それは経典においてしばしば「無我なるもの…

ONLY-J上尾愛宕店は悪質店

携帯電話販売の施策でよく使われている方法にキャッシュバックがあるが、いざ契約するとなった場合は、きちんと信頼のおける店を選ばないと駄目だ。いい加減な店を選んだ結果、キャッシュバックが貰えずじまいになったというケースが現実にはあるのだ。たと…

21世紀の不平等 - アンソニー・B・アトキンソン

『21世紀の不平等』を書いたアトキンソンは、ピケティ(世界的ベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者)の師である。 はじめに 不平等はいまや公的な論議の最前線にある。1パーセントと99パーセントについて多くが書かれ、人々は不平等のひどさについて…

Kindle本セール - 光文社

アマゾンでは、光文社の Kindle 本セールも開催しています。光文社といえば、光文社古典新訳文庫ですね。中山元のカント、亀山郁夫のドストエフスキーといったラインナップが思い浮かびます。今回のセールは「約50%割引 (+20%ポイント還元)」ということで…

Kindle本セール - 朝日新聞出版(12/13まで)

アマゾンでは、12/13(日)まで、朝日新聞出版の Kindle 本セールを開催しています。 朝日新聞出版と言えば、司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズですね。今回は「50%ポイント還元」ですから、この機会を利用すれば半額で買えちゃうということですね。 せっ…

服従 - ミシェル・ウエルベック

それはその通りだった。人間中心主義という言葉を聞いただけで微かに吐き気を覚えるし、でも、それはミニパイのせいだったのかもしれない。食べ過ぎたのだ。ぼくはミニパイを消化するためにムルソーをもう一杯飲んだ。 彼は続けた。 「考慮すべき点は、多く…

講談社kindle本が50%ポイント還元!(あの近世日本国民史も)―12/6(日)まで

以前にも書いたが、徳富蘇峰『近世日本国民史』は、渡部昇一がかのベストセラー本『知的生活の方法』で激賞していた本だ。 今でも思い出すのは徳富蘇峯の『近世日本国民史』五十巻を六本木の古本屋で見つけたときのことである。これは信長以来、幕末までのも…

わがや電力 〜 12歳からとりかかる太陽光発電の入門書 - テンダー

本書『わがや電力』の著者は、テンダーこと小崎悠太。元バーテンダーで、今は南さつま市金峰町長谷集落に移り住み、そこで「電気・水道・ガス契約ナシ」の生活をしている。自称ヒッピーだが、完全に原始的な暮らしをしているわけではなく、太陽光発電を利用…

いま生きる階級論 - 佐藤優

『帝国主義論』という補助線 では、ここまでをイントロとして、宇野弘蔵に入っていきましょう。 例えば、この官僚という問題を理解するためには、〈階級〉という概念を正確に押さえる必要があります〈見えない階級〉である官僚階級の問題を扱うことで、〈国…

いま生きる「資本論」 - 佐藤優

マルクス経済学とマルクス主義経済学 宇野弘蔵の考え方は、基本的に経済学を歴史学の一つとして考えています。経済学というのは、資本主義時代にしか通用しないものです。なぜならば、経済を基準に社会全体が動くようになったのは資本主義になってからですか…

知的トレーニングの技術 - 花村太郎

記憶読書法は記憶すること自体が目的ではなく、血肉化することが目的なのだから、もう一段グレード・アップした方法を紹介しなければならない。これはズバ抜けた記憶力の持ちぬしたち、わが国最大の知性・南方熊楠の方法であり、鷗外を筆頭に明治の知性人た…

家族の哲学 - 坂口恭平

「ちょっとしつれいしまーす」 アオの声だ。私の書斎には鍵がない。だから誰でも簡単に入れてしまう。最近ではゲンの手も届くようになってきてしまった。私は一人でもんもんと書きなから、ああでもないこうでもないと悩んでいるのに、二人は何の気がねもしな…

バリウム検査は危ない - 岩澤倫彦

プロローグ 本書カバーの画像をじっくりと見てほしい。 バリウム検査で撮影された50代男性の胃の右側には、不規則な模様を描く白い陰影が幾筋も走る。炎症を起こした胃粘膜に特徴的な太い襞に、バリウムが貼り付いたものだ。原因はヘリコバクター・ピロリ菌…

Amazonプライム・ビデオがスタート

かねてから9月下旬スタートと報じられていたAmazonプライム・ビデオがサービスを開始したようです。プライム会員なら好きなだけ映画、ドラマ、アニメ、バラエティー、ミュージックビデオが見られます(但し対象作品のみ)。利用可能端末は、Kindle Fire、Wi…

知性とは何か - 佐藤優

二〇一四年衆院選が露呈した安倍首相の反知性主義 どうすれば反知性主義を克服することができるか、というのは非常に困難な課題である。結論を先取りして言うと、反知性主義者が反知性主義を脱構築することはできない。 繰り返しになるが、反知性主義とは、…

キリスト教神学概論 - 佐藤敏夫

本書は神学の入門書であり、佐藤優が『神学の履歴書: 初学者のための神学書ガイド』の中で勧めている本である。 第二節 律法と律法主義 ユダヤ教史の中でイエスの時代はいわゆる律法主義の極めて盛んであった時代である。この時代よりもっと律法主義が盛んに…

神学部とは何か - 佐藤優

私の場合は、もともとの母体が日本キリスト教会というカルヴァン派の教団だったので、結局はカルヴァン的な発想から抜け出ることができない。人間誰しも、人生で一番最初に触れた世界観的な思想、つまり生き死にの原理を説く思想の刷り込みからは抜け出せな…

希望の資本論 - 池上彰, 佐藤優

「仕事か、家庭か」は根源的問題 佐藤 そうすると、ここで重要なのは、やはり、マルクス経済学における賃金論なんですよね。繰り返しになりますが、『資本論』における賃金論というのは、三つの要素からなります。 ①1番目。これは1ヵ月の賃金で考えましょ…

kindle本50%OFFが継続中なので英語関連本でも...

[追記]6月1日12時頃、セールは終了したようです。 [再追記]6月3日現在、セールは再開しているようです。 [追記]6月4日現在、セールは終了したようです。 デイビッド・セイン ネイティブはこう使う!マンガでわかる前置詞 ネイティブはこう使う!マンガでわか…

kindle本が半額!あの近世日本国民史も!しかし...

アマゾンがkindle本の半額セールを実施しています。[追記]6月1日12時頃、セールは終了したようです。 [再追記]6月3日現在、セールは再開しているようですが、ここで紹介した書籍は対象外になりました。 [追記]6月4日現在、セールは終了したようです。 厳密に…

サミュエル・ペピー?

スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』を読んでいたら、「サミュエル・ペピー」なる人物の日記が引用されるページに辿りついた。すぐに、この「ペピー」が誤表記であり、正しくはサミュエル・「ピープス」であることに気がついた。本書の訳者は知らないのか…

箱根制覇の背中を押した男

(前略)青学大は箱根から28年も遠ざかっていた。原によれば、ゼロからというよりもマイナスからのスタート」。出場を果たしたのは監督就任5年目だった。 2012年は5位、13年は8位、14年は5位と着実に力をつけ、強豪の仲間入りを果たした。 頂…

第152回芥川賞候補その5 - 高尾長良「影媛」

波波迦の木の葉が緩(ゆっくり)と揺れている。彼女は襲衣(おすい)を肩まで滑(すべ)し、爪立って黒葛(つづら)巻の細刀を波波迦の木の枝に当て、押し切った。 宙に舞う糠の様な粉を払い退け、腰の帯に枝を挟み入れて彼女は手近の枝へと移った。 直截な…

第152回芥川賞候補その4 - 小谷野敦「ヌエのいた家」

ヌエは、私の父である。いや、あったと言うべきか。 母は、六十七歳でがんが発見されて、一年で死んだ。発見された時は、もう手術はできず、築地のがんセンターへ通って抗がん剤治療を受けていたが、効かなかった。実家の隣りの町の病院に二ヶ月ほど入院した…

第152回芥川賞候補その3 - 高橋弘希「指の骨」

黄色い街道がどこまでも伸びていた。 その道がどこへ繋がっているのか、私は知らない。サラモウアには繋がっていないのかもしれない。しかしいずれにせよ、我々はその道を歩くしかなかった。 尤も、私はもう歩くことを止めていた。街道沿いの、一本の欅に似…

第152回芥川賞候補その2 - 上田岳弘「惑星」

Title From 2014/4/7 To 幾つもの扉が叩かれる。東京代々木の先端医療を施す総合病院の、イスタンブールの壮麗な寺院脇にひっそり建つ朽ちかけたアパートの、あるいはカリフォルニア州サンノゼのメガベンチャー企業の社長室において。それはまぎれもない契機…

第152回芥川賞候補その1 - 小野正嗣「九年前の祈り」

渡辺ミツさんのところの息子さんが病気らしい。母がそう言うのが聞こえたとき、さっきから喋り続ける母を無視して携帯の画面を見るともなく眺めていた安藤さなえを包んだのは、柔らかい雨のような懐かしさだった。 「みっちゃん姉!」とさなえはささやいた。…

指示の病

最近、気になっているのが、日本語における「指示の病」の流行だ。もちろん、これは「不治の病」に引っ掛けた自作の造語だが、この病が蔓延していることを感じることが多い。 では、「指示の病」とは何か。具体的な例を上げてみよう。まず、最近の本を一冊手…